新型コロナ 接種を努力義務 法改正へ
Efforts to inoculate the new corona to amend the law
新型コロナワクチンについて
政府は、新型コロナウイルスワクチンを2021年前半までに国民全員分の確保をめざし、まん延を避けるために緊急の必要性があるとして予防接種法上の「臨時接種」の特例にして、20年度の予備費を充て、自己負担が生じないようにする様です。接種を担う自治体の財政負担も求めないとしました。
要するに、無料なので、国民全員に接種してもらうという考えの様です。ただし、努力義務としましたが実際は、マスト感があります。
ワクチンの良否は意見の分かれるところです。予防に対しての政府のワクチン接種の対応は迅速の様に思われますが、実は、ワクチンに関しては日本は意外と後進国です。
ワクチンには、副反応もあり、日本では過去にいろいろ問題があり「ワクチンギャップ」が生じてしまいました。
そこで、今日は、ざっくり「ワクチンギャップ」に始まりワクチンについてちょっと探究してみました。
ワクチンギャップについて
「ワクチンギャップ」とは、諸外国で接種されているワクチンが日本では接種されていない状況を示す言葉です。
これは、1989年から開始した、はしか(Measles)、おたふくかぜ(Mumps)、風疹(Rubella)の3疾病を一度に予防するMMR混合ワクチンに含まれるおたふくかぜワクチンで髄膜炎の副反応が起こり、1992年に国は集団訴訟で敗訴し、1993年にこのワクチンが見合わせになったことでいわゆるワクチンの暗黒時代が始まりました。
ワクチンを接種すると副反応があるので、接種しない方がいいという噂が国民に蔓延してしまいました。
1994年に予防接種法が改正され、集団義務であった予防接種が、個別に接種を勧めますという予防接種に変更されました。予防接種の安全性について、過剰に慎重になり、新規ワクチンの承認が停滞してしまい「ワクチンギャップ」が生じてしまいました。
しかし、平成25年に数種のワクチンが接種化されることにより最近は、接種化されないワクチンが「ムンプスウイルス」のみになりギャップもなくなりつつあります。
予防接種法について
この法律は、伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために公衆衛生の見地から予防接種の実施その他必要な措置を講ずることにより、国民の健康の保持に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする。
予防接種法より
1948年(昭和23年)6月30日に公布され、2020年1月現在までに、主要なものだけで6回の改正が行われています。
今回も、新型コロナに対応すべく法改正が行われます。
冒頭に示した様に、今回の法改正では接種は勧奨され、さらに努力義務というスタンスになります。
努力義務とは?
努力義務とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」と規定された義務のことです。
つまり、「努力をすること」が義務付けられています。
ただし、義務ではありませんので、接種しなくても罰はありません。
しかしながら、努力義務の場合は、ほとんど接種することになります。
当然のことながら、このことに関して国民から強い抵抗感があることは必死であると想像できます。
そこで、厚労省は、予防接種法改正案に、必要に応じて接種勧奨と努力義務の適用を外せる規定を盛り込む方針の様です。
VPDについて
Vaccine(ワクチン)Preventable(防げる)Diseases(病気)の頭文字の略した造語です。
つまり、VPDとは「ワクチンで防げる病気」のことです。
日本では、VPDのことを考慮して、予防接種法に基づいて予防接種が行われています。
ちなみに接種には「定期接種」と「任意接種」(関連事項に記述してあります)があります。
Vaccine Hesitanyについて
Hesitanyは、躊躇するという意味なので、「ワクチンを接種することを躊躇すること」を言います。
ちなみに、 WHOは、「2019年の世界の健康に対する10の脅威」4)として、「ワクチンを接種することを躊躇すること」を一つとしてしています。
2020年は、新型コロナが10の脅威にランクインするかもしれません。
ワクチンの副反応は?
新型コロナウイルスのワクチンにおいて、英国でワクチン接種後に被験者が神経障害の一種の横断性脊髄炎と診断されたと報じられましたが、また治験が再開されました。
お薬やワクチン等は、残念ですが、副作用や副反応は避けては通ることができません。
薬は、リスクとベネフットの天秤です。
例としてよく抗癌剤が挙げられます。抗癌剤を使用することによる副作用はありますが、癌細胞を叩くために使用しています。
今回のアストラゼネカによって提供されるワクチンは、「アデノウイルスベクターワクチン」です。ちなみに、ベクターワクチンを接種するのは、日本では初めてになります。「コンセプトワクチン」なので副反応についてはかなり微妙です。
ワクチン開発は、第1から第3段階まで、接種する量や回数、対象年齢などを変えて、さまざまの事をチェックし、早くても4~5年、長い場合は10年以上かけて治験を行うのがふつうです。
長い治験を行ってゴーサインが出てから接種化しても不幸にも副反応が出てしまった例もあります。
記憶に新しいものにHPVワクチンがあります。
今回の様な早急な承認は、安全性の不安が拭いきれません。
もし副反応が出たら!
ワクチンの副反応は、完璧に回避することはできません。
定期接種の場合は、予防接種法に基づいて医療費が支払われる予防接種健康被害救済制度が適応されます。
任意接種の場合は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が実施する医薬品副作用被害救済制度が適用されます。
関連事項
ワクチンといえば
ワクチンといえば、エドワード・ジェンナー、ルイ・パスツールでしょうか?
1798年ジェンナーが牛痘(牛がかかる天然痘)を用いた天然痘予防の論文を報告しました。これが、人類史上、初めてのワクチンです。
「痘痕も靨(あばたもえくぼ)」ということわざは、この天然痘に由来しています。ちなみに、好きになった人の天然痘にかかってできた跡のくぼみが、かわいい靨(えくぼ)に見えてしまうという ことから生まれた句です。
現在放映されている大河ドラマの「麒麟がくる」の明智光秀の妻煕子(ひろこ)にも関係していますので詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
話を戻します。おおよそジェンナーの論文から100年後の1880年代に、この業績を称えパスツールがワクチンと名付け、さまざまなワクチンを開発して予防接種を世に広めました。その中でも狂犬病ワクチンはあまりにも有名です。
現在もパスツール研究所は存続し、日本の東京大学と京都大学と連携体制をとっています。
おまけですが、アリストテレスの自然発生説を否定したパスツールの有名な「白鳥の首フラスコの実験」のビデオがあったので興味ある方は、ご覧ください。
ワクチンとは
ワクチンは、英語では「Vaccine」と綴ります。
人は、「免疫」という細菌やウイルスから体を守ってくれる機能を持っています。これが機能していないとすぐに病気になってしまいます。
免疫とは、疫(病気)から免れることです。
免疫は、異物が体内に侵入して来ると、監視の役割を担う細胞が異物の一部を感知して攻撃を担当する細胞に指令を出します。そして異物は攻撃を担当する細胞によってやっつけられます。
さらに、免疫は一度覚えた異物を忘れません。再び異物が侵入してきても、異物を記憶した攻撃を担当する細胞が速やかに仕事をしてくれます。このシステムでウイルス等を攻撃して重症化しないようにしてくれます。
ワクチンは体に侵入してきた特定の異物(抗原)と戦う細胞(抗体)を作り出すものです。ちなみにワクチンを接種したら、ある特定の異物が原因の病気に感染しないというものではありません。
ワクチンは、健康人に注射することが他の薬とは1番の違いでしょうか?
ワクチンの種類
「生ワクチン」「不活化ワクチン」「人工合成ワクチン」の3種類あります。
日本で接種されているワクチンの一覧です。
接種されているワクチンは、「生ワクチン」と「不活性化ワクチン」です。
人工合成ワクチンの接種は、まだ日本ではありません。ちなみに新型コロナのワクチンは「ウイルスベクターワクチン」ですので「人工合成ワクチン」になります。
生ワクチンとは
生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料として作られます。
毒性を弱められたウイルスや細菌が体内で増殖して免疫を高めていくので、接種の回数は少なくて済みます。十分な免疫ができるまでに約1ヵ月が必要です。
不活化ワクチンとは
病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を不活化したものを原材料として作られます。
生ワクチンに比べて生み出される免疫力が弱いため、1回の接種では十分ではなく、何回か追加接種が必要になります。
人工合成ワクチンとは
生ワクチンや不活化ワクチンと違い、原材料に、病原体を使用しません。最新のバイオテクノロジーを駆使し、遺伝子を操作したウイルスを成分に用いています。
今回の新型コロナで接種するワクチンも人工合成ワクチンのウイルスベクターワクチンです。これは、抗体産生のほか細胞性免疫のT細胞を誘導するものです。
定期接種と任意接種について
予防接種には、法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」と、希望者が各自で受ける「任意接種」があります。
接種費用は、定期接種は公費ですが(一部で自己負担あり)、任意接種は自己負担となります。
市区町村が実施する予防接種の種類や補助内容の詳細については、市区町村などに確認するようにしてください。
参考文献
2)齋藤昭彦. “日本の予防接種制度—ワクチンギャップをどう埋めるか?—.” 小児耳鼻咽喉科 34.3 (2013): 295-300.
3)世古留美, et al. “母親の予防接種に対する認識と接種状況.” 日本公衆衛生雑誌 53.12 (2006): 884-888.
4)Ten threats to global health in 2019
5)奥田研爾、新型コロナウイルス終息へのシナリオ、主婦の友社、2020年
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