新型コロナウイルスのワクチンについて

About the new coronavirus vaccine

厚生労働省は、昨年の12月18日、全国の都道府県や市町村に対して接種体制の整備計画の案を示しました。

「2021年2月下旬をめどに先行して1万人程度の医療従事者」に、「3月中旬をめどに残るおよそ300万人の医療従事者」に接種を開始できる体制を整備します。

続いて「3月下旬をめどに高齢者」に接種できる体制を確保し、「そのほかの人については基礎疾患のある人」などを優先しながら4月以降に接種を始める方針のようです。

*ただし、優先順位等については見直される可能性あり

ワクチンの種類

米ファイザー社(独ビオンテック社と共同)mRNAワクチンは、昨年12月に英国、米国、欧州などで承認(緊急使用許可や条件付き承認を含む)されました。米モデルナのワクチンも昨年12月に米国で緊急使用が認められ、今年1月には欧州でも承認を取得。英アストラゼネカのワクチンは、英国やインドなどで承認を取得しています。

これらの3種が先頭を走っていて、日本政府は、これらの3つを採用するようです。また、現時点では、医療機関や自治体の判断で使用ワクチンが決定します。

また、もし接種する場合は、同じ機関で接種するようにしてください。理由は、機関によってワクチンが異なるからです。

必ず、同じワクチンを接種してください。

ワクチン有効率について

ファイザー社のワクチンは、後期試験で病気の症状を予防するのに約95%効果的でしたが、モデルナ社のワクチンは約94%効果的で、アストラゼネカ社のワクチンは70%効果的でした。

インフルエンザのワクチンは30%から60%効果があると言われています。それと比較すると驚異的な数値です。

報道では、95%有効性があるとの報道がなされていますが、正確には、有効性が95%あるということではなく有効率95%ということなので注意が必要です。

この有効率95%とは、たとえばワクチンを100人に接種したら、そのうち95人が発症しないということではありません

有効率の計算式

まず、治験をする際に、新型コロナワクチンを接種した群と接種しない群をランダムに設定します。

わかりやすい様に、健常者20000人を対象とします。「ワクチンを接種した群が10000人」と「ワクチンを接種しなかった群を10000人(プラセボ群)」に振り分けて、発症の有無を観察します。

仮に、その結果が、新型コロナウイルスを発症したのはワクチン接種群では5人、プラセボ群では100人とします。それぞれの感染率はワクチン接種群では5/10000つまり0.05%、プラセボ群は100/10000つまり1%ということになります。

ワクチンを接種すると感染率が1%から0.05%に減ることになります。見方を変えるとワクチンを接種するとプラセボに比べ、感染率が0.05倍(0.05/1)に減ることになります。

感染率が0.05倍ということは、(1−0.05)✖︎100=95で感染率が95%減ることになります。

有効率95%とはこのような計算によって求められた数値で、言い換えれば1万人にワクチンを接種すると、新型コロナウイルスの感染者が100人から5人に減るということです。

ワクチン保管

ファイザー社やモデルナ社のワクチンは高い効果が確認されていますが、保管のために➖70~➖20度の温度管理が必要です。ところが、アストラゼネカ社のワクチンは、通常の冷蔵庫で長期保管ができる上、価格も低いため、途上国も含めたワクチンの供給に期待されています。

ワクチン接種に対する国民感情

世界経済フォーラムと協働で行われたイプソスの新しい調査によると、世界15カ国の調査対象者18,000人以上の73%が、新型コロナウイルスのワクチンがあれば接種すると回答しています。これは3カ月前に比べて4%ポイント減少しており、可能であればワクチンを接種する意向が低下していることを示しています。

日本の新型コロナワクチンの接種意向は69%です。面白いことに、ファイザー社のお膝元であるアメリカやドイツでは低いことがわかります。

理由は、言うまでもありませんが、副反応が気になるからです。

私たち日本人も、過去の薬害が国民感情にあり、どうしてもワクチンに対する懐疑的な感情は否めないところです。

最近では、記憶に新しいところで、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス感染予防のためのワクチン接種を巡る副反応が大きな話題となりました。日本人にはワクチン忌避が根強くある様です。


参考文献

1)Polack, Fernando P., et al. “Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine.” New England Journal of Medicine (2020).

2)Jackson, Lisa A., et al. “An mRNA vaccine against SARS-CoV-2—preliminary report.” New England Journal of Medicine (2020).

3)Anderson, Evan J., et al. “Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA-1273 vaccine in older adults.” New England Journal of Medicine 383.25 (2020): 2427-2438.

4)Voysey, Merryn, et al. “Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK.” The Lancet (2020).

5)ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について(第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会)

6)ワクチンの取り扱い


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