洗口剤

Mouthwash

歯科医院で使用されている洗口剤

1)バイオフィルムにの表面に付着して作用するもの

2)バイオフィルム内に浸透して作用するもの

洗口剤の作用する部位によって上記の2種類に分類しました。

1)バイオフィルムの表面に付着して作用するもの

(1)グルコン酸クロルヘキシジン(コンクールFバトラーCHX洗口液等)

細菌の細胞壁に結合することで細胞膜を傷害して抗菌作用を発揮します。グラム陽性菌や陰性菌を含め広い抗菌性を有します。また、歯面に吸着してプラークの再付着を抑制することが知られており、アメリカでは粘膜に使用される第一選択薬となっています。日本ではグルコン酸クロルヘキシジンによるアナフィラキシーショック例が報告されたことから、洗口液のグルコン酸クロルヘキシジンは、原液濃度で0.05%までに規制されています。薬剤の有効時間は12時間

(2)塩化ベンゼトニウム(ネオステリン®︎グリーンベンゼトニウム塩化物うがい液0.2%「KYS」等)

陽イオン界面活性剤として作用し洗浄効果を有します。口腔細菌に作用してプラーク形成抑制や歯肉炎の抑制作用を示すだけでなく、一般細菌や、カンジダなどの酵母様真菌に有効であることが特徴です。本薬に対する粘膜の耐容性は比較的良く、0.004%液が口腔、0.01~0.02%液が創傷部位に使用しています。

(3)塩化セチルピリジウム(モンダミンナイトクリアガム・デンタルリンスナイトケア等)

溶液中で陽イオンとなる界面活性作用による洗浄効果と細菌の細胞膜を変性させることで殺菌性を有します。低濃度でも菌体に静電気的に結合することで効果があり、毒性や刺激は少ない。グルコン酸クロルヘキシジン同様に歯面に吸着してプラークの再形成を抑制し、歯肉炎の予防に効果があることが報告されています。口腔内の消毒には、ベンゼトニウム塩化物として、(50倍希釈)溶液として洗口します。

2)バイオフィルム内に浸透して作用するもの

(1) ポビドンヨード(イソジン®️ガーグル液

ポビドンヨードは、遊離ヨウ素の酸化作用により細菌の蛋白質合成を阻害し強い殺菌作用を有します。洗口には0.5%ポビドンヨード溶液を希釈して0.1%ほどで用います。口腔細菌全般に対し強い殺菌作用を示します。ハロゲン系殺菌剤である本剤は金属に対する強い腐食作用を有することからインプラントあるいは金属補綴物を多く有する患者には使用しないことがスタンダードです。また、甲状腺に異常がある患者さんにも注意が必要です。

(2) エッセンシャルオイル(薬用リステリン®️アセス®️

エッセンシャルオイルは、植物に含まれる揮発性の芳香物質を含む有機化合物で、フェノール化合物を主体とする複数の天然由来成分(メントール、サリチル酸メチル、チモール、ユーカリプトール)を含有しており殺菌作用の他に抗炎症作用を示します。エッセンシャルオイルを主成分とした洗口剤にリステリン®️があり、リステリン®️のバイオフィルム内浸透速度を調べた研究ではグルコン酸クロルヘキシジンよりも4.89倍早かったことが報告されています。

3)イソプロピルメチルフェノール(システマEXデンタルリンス

イソプロピルメチルフェノール(IPMP)は他の薬液と比べると殺菌力は弱いですが、速やかにバイオフィルムの内部まで浸透して殺菌効果を示します。最近ではほとんどの洗口剤や歯磨剤に含まれるようになりました。

(4) トリクロサン

フェノール系の薬用洗剤で、一般細菌に対する消毒剤として多用されています。特にグラム陽性菌への作用が強く、脂肪酸合成系酵素を阻害することで細胞壁を破壊し殺菌的に作用します。プラーク形成を阻害する効果が認められており、洗口剤として応用されていましたが、副作用として、内分泌かく乱物質として働いたり、発がん作用があり、成長発育に悪影響があり、使用されなくなりました。現在薬用石鹸等は使用されなくなってきましたが、洗口剤等には使用されているようです。これ以外にもあまり良くないものが含まれていますが(汗)

洗口剤は効果があるのか?

洗口液による歯間隣接面のプラークの殺菌効果を調べた研究によると、ある洗口剤を用いて30秒洗口後に歯ブラシが届かない歯間隣接面からプラークを回収して菌を計測すると洗口前より約40%ほど減少していたというデータがあります。

洗口剤や口腔内環境によってデータが違うと想像されますが、各洗口剤ごとにデータがないために一概には言えませんが、洗口剤には効果があると言えます。しかしながら、効果があるのは歯肉縁上だけで歯肉縁下にはありません。

洗口剤を使えばブラッシングは不要?

4日間ブラッシングを行わず洗口液のみで行なった場合のプラークの付着を調べた実験がありますが、結果は洗口剤の効果はほとんどなかったというデータがあります。このことから機械的プラークコントロールを行なったのちに洗口剤を使用しなければ十分な効果は期待できません。

どの洗口剤がいいのか?

バイオフィルムに作用する観点から考察すると

①殺菌力より浸透性を選択

②薬液の浸透性はIPMPが優れている

③薬液の持続時間はグルコン酸クロルヘキシジンが長い

まとめ

洗口剤は機械的プラークコントロールと併用

使用洗口剤についてはかかりつけ歯科医院で相談を

今回の投稿では、歯科医院でよく使われている洗口剤についてフォーカスしました。また、洗口剤によっては口腔内の状態により好ましくないものもあります。歯科医院では、患者さんの口腔内状況に合わせて洗口剤を選択しています。ご使用になる場合は、必ず、かかりつけの歯科医院でご相談になってください。


関連記事

口腔化粧品と歯磨き剤について

歯科で使用されている「うがい水」や「歯磨剤」ついて薬機法を絡めて記述 ...

ジェルコートIP

医薬部外品 特長 インプラントを守る“フッ素無配合” チタンインプラントを腐食しない ※近年の研 ...

バイオフィルム

バイオフィルムというワードは、CMのお陰で最近ではほとんどの人が認知するワードとなりました。 ...

Pocket
LINEで送る





コメント


Comments are closed.