ファクターX②

Factor X ②

前回のブログで、日本人の新型コロナによる死亡率が低い理由の一つとして考えられている、上久保教授の説をフォーカスしましたが、本日はファクターXの一つとして考えられている免疫のHLAについてフォーカスしてみます。

HLAは今から20年ほど前に、「恋愛遺伝子」という本を読んだときに知ることになったワードですが、この本意外と面白いかもしれません。

余談はさておき、血液型についてざっくり整理します。

血液型の分類

血液型というとABO式の血液型をイメージできます。

改めて血液型の分類ですが・・・

ざっくり、「赤血球による分類」と「白血球による分類」があります。

赤血球による分類

日本では有名な血液型と言えば、A型、B型、O型、AB型ですが、ご承知の様にこの分類は、赤血球の抗原を元に発見されたもので、ABO式血液型と呼ばれています。

ちなみに、みんなが大好きな血液型と性格の関係性についてですが・・・

日本では広く一般に信じられていますが、残念ながらABO式血液型と性格とは関係性はありません。1)2)

ABO式血液型と関係があるだろうと言われているのは、ピロリ菌が原因の胃がんとの関係性ぐらいです。4)

そのほか、赤血球の抗原を元に分類されたものは100種類ぐらいあります。忘れてはいけない重要なものにはRh式があります。

これは、アカゲザルと人間で共通した血液型抗原の有無で分類しています。また、アカゲザルの頭文字(Rhesus monkey)をとってRh因子としたと言われています。

Rh式血液型の関連抗原には、C、c、D、E、e抗原があります。Rh式血液型というのは、赤血球のD抗原の有無を示すもので、D抗原がある人がRh(+)、D抗原が無い人はRh(➖)です。

ちなみに、日本人は、99.5%がRh(+)で0.5%がRh(➖)です。 A型Rh(-)0.2%(約500人に1人)、O型Rh(-)0.15%(約670人に1人)、B型Rh(-)0.1%(約1000人に1人)、AB型Rh(-)0.05%(約2000人に1人)

AB型でRh(➖)の人は輸血は大変なので注意が必要です。

白血球による分類

「白血球の血液型」として知られるHLA(Human Leukocyte Antibody=ヒト白血球抗原)は約16,000種あると言われています。また多くの役割がある事が分かってきています。

1954年、白血球の血液型として発見され、Human Leukocyte Antibodyの頭文字をとってHLAと呼ばれています。しかし、発見から半世紀以上を経て、HLAは白血球だけにあるのではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していて、ヒトの免疫に関わる重要な分子として働いていることも明らかになりました。

HLAと言えば移植というワードがすぐに頭に浮かびます。HLAが一致しないと移植はうまくいかないことは、マスコミやテレビ番組によってほとんどの人が認知することになっていると思われます。

やがて特定のHLA型を持つ人は、ある特定の疾患を発症しやすいことがわかってきました。
例えば、ある型のHLAを持つ人は、他の人に比べ何倍かある疾患になりやすかったり、特定のHLA型と疾患の関連性が研究された結果、HLAは自己免疫疾患を中心に、200種類ほどの疾病に関係していることが明らかになりました。

さらにHLAは、免疫とも深く関係していることがわかりました。

ちなみに、歯科においても、歯周病治療もオーダーメイド治療等HLAは、必要不可欠になってきています。6)7)

SARSとHLAの関係

2003年に流行したSARS(SARS-CoV)では、日本人の感染者はゼロでした。当時も結構大変で、海外旅行をキャンセル等ありましたが、SARSは自然消滅してしまいました。

この際に、SARSとHLAに関する研究がされて、SARSは、HLA-B46の人が重症化しやすいことが判明しました。8)

ところが、SARSは8ヶ月後に自然消滅してしまいました。

新型コロナとHLAの関係

体がウイルスに感染するとウイルスに感染した細胞のHLAが、細胞傷害性T細胞などに提示します。それから細胞傷害性T細胞など様々な免疫細胞が、ウイルスを認識するようになり、様々な免疫反応が引き起こる様になります。

HLAを介した免疫反応の結果、一部の感染者において、本来自己を守るために働くはずの免疫機構が暴走し、サイトカインストームのような非常に強い免疫反応が起きて重症化すると考えられています。

ちなみに、新型コロナウイルスは、SARSウイルスに近く、一時は人工的に作られたのではないかという話も出ましたが、現在では、新型コロナウイルスのゲノムデータの解析によって、コウモリとセンザンコウの両方に由来する「複合体」のウイルスである可能性が高いという研究結果が公表されました。9)

SARSとHLAとの関係が明らかになった様に、新型コロナもある特定のHLAが重症化と関係があるということになると、HLAと軽症の関係も解析されることになり、血液検査で簡単にHLAが判明するので、新型コロナに対する対策方法が増えることになるわけです。


参考文献

1)縄田健悟. “血液型と性格の無関連性――日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠――.” 心理学研究 85.2 (2014): 148-156.

2)眞嶋良全. “疑似科学問題を通して見る科学リテラシーと批判的思考の関係.” 認知科学 19.1 (2012): 22-38.

3)Woolf, Barnet. “On estimating the relation between blood group and disease.” Ann Hum Genet 19.4 (1955): 251-253.

4)栗田英男. “ABO 血液型からみた胃癌の臨床疫学的研究.” 日本衛生学雑誌 31.2 (1976): 367-377.

5)Edwards, J. H. “HL‐A AND DISEASE THE DETECTION OF ASSOCIATIONS.” International Journal of Immunogenetics 1.4 (1974): 249-257.

6)高柴正悟. “歯周病のオーダーメイド治療に向けた単球機能の分子生物学的研究.” 日本歯周病学会会誌 44.3 (2002): 254-260.

7)力丸哲也. “歯周病細菌によるヒト末梢血 T 細胞活性化.” 福岡歯科大学学会雑誌 24.3 (1997): 221-234.

7)Lin, Marie, et al. “Association of HLA class I with severe acute respiratory syndrome coronavirus infection.” BMC Medical Genetics 4.1 (2003): 9.

8)Li, Xiaojun, et al. “Emergence of SARS-CoV-2 through recombination and strong purifying selection.” Science Advances (2020): eabb9153.


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