サルコペニアとフレイルとロコモについて
日本は、誇らしいことに世界一の高齢社会です。5年後の2025年には75歳以上の後期高齢者が2000万人を越えると言われています。
ところで、健康寿命にフォーカスしてみると、男性は9年間、女性は13年間介護状態になると言われています。
要介護の原因は、筋力が低下することによる運動機能の低下により身の回りのことができなくなるということです。
長寿社会を迎え、新しい概念としてフレイル、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、サルコペニア等のワードが頻繁に聞かれる様になりました。そこで簡単にまとめてみました。
サルコペニアとは?
サルコペニアという用語は、1989年にIrwin Rosenbergによって生み出された造語で、ギリシャ語で筋肉を表す「sarx (sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた言葉です。
当初は骨格筋量に注目していましたが、現在では骨格筋量減少とそれによる機能低下を含める場合に言われています。
筋肉の量が減ってしまい運動能力が低下した状態です。
フレイルとは?
フレイルは、海外の老年医学の分野で使用されている英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。
「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」になりますが、日本老年医学会は高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、多くの議論の末、「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました。
現在ではこれを採用して歯科では「オーラルフレイル」と言っています。
フレイルの判断
フレイルの判断は、Friedが提唱したものが採用されていることが多いです。Friedの基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。
1.体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2.疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3〜4日以上感じる
3.歩行速度の低下
4.握力の低下
5.身体活動量の低下
ロコモティブシンドロームとは?
日本整形外科学会が運動器の障害による移動機能の低下した状態を表す新しい言葉として「ロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」と略します)(locomotive syndrome)」を提唱し、和文は「運動器症候群」としました。
Locomotive(ロコモティブ)は「運動の」の意味で、機関車という意味もあり、能動的な意味合いを持つ言葉です。運動器は広く人の健康の根幹であるという考えを背景として、年をとることに否定的なニュアンスを持ち込まないことが大事であると考え、この言葉を選んだそうです。
ロコモは運動器の障害によって「立つ、歩く」という移動機能が低下した状態をいいます。
歯科治療での問題点
予防的に骨粗鬆症になりにくくするためにビスフォスフォネート系の薬を飲んでいる患者さんが多く見受けられます。
外科処置等が禁忌なことから臨床ではこの場面に頻繁に遭遇します。(臨床での対応の仕方は「BP剤について」を参照してください。)
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