POIC®️ウォーターに対する疑念

Doubts about POIC Water

なぜか、歯医者さんが大好きな17族のハロゲン(フッ素、塩素、ヨウ素)ですが・・・

先日某知事のうがい水で話題になったポビドンヨードも、17族のヨウ素です。

うがい水がらみで、最近、患者さんからうがいをすると「むし歯の予防」や「歯周病の予防」になるうがい水の「POIC®️ウォーター」=「タンパク質分解型除菌水」というものがあるのですが、「これ何ですか?」という質問があります。

ちなみに、このPOIC®️ウォーター(以下、POICウォーターと記述します)も17族の塩素(Cl)が関係するものです。

図1:周期表

17族は、電気陰性度が低いため、違う言い方をすると何かの元素とすごく反応しやすいのでちょっと扱いが難しい元素です。

ほとんどの人に認知されているフッ素も同じ族に属する元素なので、同じ様に他の元素と反応しやすい性質を持っています。

歯のハイドロキシアパタイトと反応してフルオロアパタイトになり歯質が強化され虫歯予防になるといわれていますが・・・

すぐに他の元素と反応してしまうが故に問題もあります。このことに関してはまた違う機会に触れることにします。

話を戻して、

本日のブログは、以前に当ブログで触れた「魔法の水」ついて記述した際にPOICウォーターについて探究したものを基にPOICウォーターを購入して簡単な調査をしましたのでそれについても記述しました。

POICウォーターとは?

取り敢えずGoogle先生に聞いてみました。

POICと検索してみると

POICウォーターを導入している歯科医院やこれに関するHPが目白押しです。

ざっと閲覧してみると、どうもPOICウォーターを生成できる機械を購入して治療を受けている患者さんに提供している様です。

また、POIC研究会と関係があるようです?

研究会という冠ネームなので、POICウォーターについては熟知しているはずなので入会を考えましたが取り敢えず、自分で探求してみました。

POIC研究会というサイトを覗いてみると

POICとは「Professional Oral Infection Control」の略のようです。

専門家による口腔内の感染を制御してしまう水ということでしょうか?

「ヘェ〜」すごい水のようです?

また、POIC研究会とは、専門家による口腔内の感染をコントロールすることを研究している会の様です。(入会していないので詳細は不明)

POICウォーターの使い方を熟知した団体の様です?

販売業者は、株式会社エピオスの様です。

POICウォーターの特徴は?

POICウォーターの特徴は概ね下記の様になります。

①有効残留塩素濃度500ppm、pH9弱アルカリ性のタンパク分解型除菌水。

②超純水とローブロム塩のみを電気分解して作られる。薬品を使用していないため、安全性が高く、副作用は極めて少ない。

③pH9の状態では次亜塩素酸イオンが豊富(理論値で487.5ppm)であり、次亜塩素酸イオンによってタンパク汚れが分解され、 その後pHが7に下がり次亜塩素酸が豊富になることにより除菌力が発揮される。この作用はホームケアに有効であり、 タンパク汚れ≒プラークを歯面より浮かせ、その後除菌力を発揮する。このことはむし歯予防、歯周病予防に極めて有効である。

特徴を見る限りではすこぶる良さそうです。バイオフィルム 等の除去ができ、さらに口腔内のむし歯や歯周病菌までも退治してくれるまさに「魔法の水」の様に思えてしまいます。

事実、HPには「魔法の水」と記述してあります。それでは、もう少し、POICウォーターについて深掘りして探究してみます。

POICウォーターは電解機能水!

また、POICウォーターと記述があったのでクリックしてみると「」と「」を電気分解した電解機能水である事が分りました。

では、ざっくり魔法の水の電解機能水についてご説明します。

電解機能水とは?

電解水とは?

水道水や薄い塩化ナトリウム(NaCl)などの塩化物イオン(Cl)を含む水溶液を弱い直流電圧で電解処理して得られる水溶液の総称です。

装置や電解条件などの違いにより色々なものがつくられますが、使用目的に基づき、洗浄消毒など衛生管理に使われる殺菌性電解水(強酸性電解水や微酸性電解水などの酸性電解水、次亜塩素酸ナトリウム希釈液とみなされている電解次亜水、ならびに電解製オゾン水)<表1>と、持続的飲用による胃腸症状改善効果が明らかとなっている飲用アルカリ性電解水(アルカリイオン水)とに大別されます。

機能水研究振興財団HPより

中学校の食塩水の電気分解の実験と同じことです。小難しいことではありません。(食塩水を電気分解して何が生成できるのか?については「次亜塩素酸水を人体(粘膜)に使用する疑問」を参考にしてください。)

魔法の水」=「POICウォーター」は

要するに、「食塩水を電気分解して生成される溶液」の様です。

図2:2種類のPOICウォーター

改めて、POICウォーターのHPを見てみると、水と食塩を電解して生成した高濃度のpH9のタンパク質分解型除菌水低濃度pH6.5の微酸性電解機能水と書いてあります。

pH6.5の微酸性電解機能水の成分は、次亜塩素酸(HClO)と理解できるのですが・・・

高濃度のpH9のタンパク質分解型除菌水とは何なのか?成分は何?という疑問が湧いてきます。

pHが9ということは、アルカリ性なので次亜塩素酸水ではないし、アルカリ性の謎の液体ということになります。

察するところ、アルカリ性の液体なので、バイオフィルム を分解できる液体でしょうか?となると、歯科関係者の期待は大きくなり、飛びつきたくなる商品になりますねぇ!

事実、バイオフィルム が除去できるのならと、ちょっと心動かされました。

高濃度のpH9のタンパク質分解型除菌水とは?

図3:電解機能水

POICウォーターは電解機能水と謳っているので、再度、機能水研究振興財団の表1を見てみると、pH9の電解水は電解次亜水と呼ばれています。したがって、高濃度のpH9のタンパク質分解型除菌水は「電解次亜水」ということになります。ちなみに、低濃度のpH6.5は次亜塩素酸水になります。

電解次亜水とは?

陽極と陰極を仕切る隔膜がない一室型電解槽で作られます。
塩水を電気分解するとpH7.5 以上の弱アルカリ性の電解水が生成されます。これを電解次亜水といいます。この電解水の主成分は次亜塩素酸ナトリウムで未反応の食塩等も含まれるものです。

機能水振興財団の分類に従うと、「高濃度のpH9のタンパク質分解型除菌水」は、食塩水を電気分解して生成される電解次亜水であり、低濃度の次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液ということになります。

名前を都合の良い名前にしているだけ

名前をタンパク質分解型除菌水としていますが、要するに次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液ということになってしまいます。

さらに、これは、次亜塩素酸ナトリウム希釈液と同等と記述してあります。

有効塩素濃度が500ppmの溶液なので、消毒用の次亜塩素酸ナトリウムのピューラックス (60000ppm)を120倍に希釈した溶液と変わらないことになります。

あろう事か、POICウォーターは、「次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液」という疑念が生じてしまいました。POICウォーターの特徴の①が微妙になってしまいました。

「POICウォーター」=「たんぱく質分解型除菌水」=「電解次亜水」=「次亜塩素酸ナトリウムが主成分の液体」

そんなばかな?

医療関係者のみならず一般の方でも次亜塩素酸ナトリウムを人体に使用するのは危険なことは認識しています。したがって、次亜塩素酸ナトリウムが主成分な液体だからといって、これを患者さんに推奨することはあり得ません

事実、取り扱っている医院のHPを覗いてみると、次亜塩素酸ナトリウムは有害と記述してあります。

次亜塩素酸ナトリウムが主成分なら問題ないということでしょうか?

ちなみに、何か購入する時、例えばカメラ等購入するときは、詳細に調べて購入します。ましてや結構な値段がするものは尚更です。当然事前に調べて購入している訳です。

ましてや、POIC研究会に入会しているのですから、POICウォーターに関しては熟知しているはずです。

したがって、二枚舌なのかあるいはPOICウォーターは高額な装置で生成しているが、実は次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液と知らないのか?はたまた当方の考察が検討外れなのかいずれかになります。

歯科医院で、次亜塩素酸ナトリウムが主成分なものを用いて患者さんにうがいをさせていることなどあるはずがありません。何かの間違いでは?

そんなことがあるはずがありません。

そこで、ちょっと違う角度から考えてみました。

ちょっと見方を変えてみた!

図4:次亜塩素酸を含有する水溶液の関係性

次亜塩素酸が含まれる水溶液をアルカリ性と酸性で分類してみるとどうなるのか?

図4に示すように、次亜塩素酸を含有する水溶液は概ね4つのグループに分けることができます。そのうち、アルカリ性を示すものは、「次亜塩素酸ナトリウムの希釈液」か「電解次亜水」しかありません。

見方を変えて見ても同様に電解次亜水(次亜塩素酸ナトリウムが主成分の液体)という結論に帰結してしまいます。

生成装置と生成物からみたら!

図5:電解槽と非電解物質と生成物とpHの関係

そこで、次に生成装置と生成物とpHについて整理してみました。

次亜塩素酸が含まれる溶液は、図5に示すように、生成装置(電解槽)と非電解物質によって若干異なります。

図5に示すように、非電解物質が塩化ナトリウムの場合は、有隔膜の装置では強酸性が、無隔膜の装置では電解次亜水が生成されます。

POICウォーターは、無隔膜の装置塩化ナトリウムの水溶液を電気分解するので電解次亜水が生成されることになります。

無隔膜の装置で食塩水を電気分解してできるものは電解次亜水

何度も言いますが、無隔膜の装置で、塩化ナトリウムの水溶液を電気分解しても微酸性次亜塩素酸水は生成できません。

生成されるものは、pHが7.5以上の電解次亜水になります。

余談ですが、エピオスシステムは、図5に示すように、塩酸あるいは塩化ナトリウムと塩酸の混合液を電気分解して微酸性次亜塩素酸水を生成していると考察できます。

世の中に出回っている食塩と水を用いて次亜塩素酸水を生成するものは、ほとんどが次亜塩素酸ナトリウムが主成分の電解次亜水を生成するものの様です。

それを名前を変えて販売しているのが実態の様です。次亜塩素酸系のものは、ほとんどが医薬品でなく雑品なので、法律の規制がなく野放し状態です。

食塩水を電気分解しても次亜塩素酸水はできない!

以前ブログでも触れましたが、無隔膜の装置で電気分解したらどうなるか確かめたかったので、自作した電極で食塩水を電気分解してみました。

もし、ご自身で水と食塩で次亜塩素酸水を生成する場合は、食塩には拘った方が良さそうです。食塩に含まれている臭素が電気分解によって次亜臭素酸になり、これが空気によって酸化され発癌物資である臭素酸となるからです。ローブロムの食塩をご使用ください。

食塩を溶かす水ですが、超純水を使用した方が良さそうです。ところが、一槽式の無隔膜の装置で電気分解しても50%ぐらいしか電気分解されません。未反応の食塩が存在してしまいます。事実POICウォーターはちょっとしょっぱいです。水は、なるべく純度の高いものをご使用ください。

ところで、食塩水を無隔膜の装置で電気分解するとpH8から9の電解次亜水が生成されます。これは、次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液なので、次亜塩素酸水を生成するにはpHを下げるために酸性の溶液を入れないとできません。そこで、希塩酸を加えることによってpH6.5の次亜塩素酸水を生成しましたが、未反応な食塩とかいろいろな物質が含まれる溶液の様です。

純度の問題はありますが、この方法は、機能水団体に言わせると、酸性化次亜水になる様です。

塩酸の量が多くpHが4以下になると塩素が発生してしまうので危険ですので絶対に真似はしないでください

ちなみに、医薬品として唯一認められている「フリーキラS」もほぼこの方法と同様に、次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を加えて製造しています。

無害の材料から無害のものが生成されるという一見正しそうな論法?

良い商品は良い原料からしか生まれない」というキユーピー創始者である中島 董一郎の有名な名言ですが・・・

私たちには原料にこだわる思考がある様です。このことは、良い材料を使えば良いものができると思ってしまうということです。

POICウォーターの説明にはこの思考パターンが巧みに使用されています。

POICウォーターの特徴として冒頭で触れた②

超純水とローブロム塩を電気分解して作られる。薬品を使用していないため、安全性が高く、副作用は極めて少ない。」としています。

つまり、良い材料(不純物の少ない超純水と発癌物質の臭素酸の基になる臭素がない塩)を使用して生成したものは、薬品を使用していないため、安全性が高く、副作用は極めて少ないものであるという論法です。

Xは無害である。Yも無害である。故にXとYで生成したZは無害であるという論法、この論法は、実はおかしな論法です。

この論法、一見、問題ないように思われますが・・・すごく変

Zが何でその安全性の証明はなされていないのに、安全性が高く、副作用が極めて少ないとしているのですから?

電気分解は、酸化還元反応です。原理は単純ですが、化学反応なので、水(H2O)と食塩(NaCl)が化学反応をして何ができるのか言及していません。化学反応で生成されるものは次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が主成分の溶液です。(一連の化学反応は、「次亜塩素酸水を人体(粘膜)に使用する疑問?」 に記述してありますので参考にしてください。)

したがって、次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液は安全性が高く、副作用が極めて少ないものとなってしまいます。

不思議な論法です。

この論法、「チェリー・ピッキング」という詭弁の論法です。詳しくは「どうして騙されてしまうのか?」を参照してください。

POICが記載されている文献は?

POICウォーターとして販売等も行われ、むし歯や歯周病の予防と謳っているので、通常は、これに関しての基礎データ等が論文として必ず存在するわけです。

そこで、POICに関しての論文をみると手がかりがあるのではないかと考え、POICウォーターの文献を探してみました。

文献は一つしかヒットしない?

Google Scholarで「POIC」「 バイオフィルム 」でキーワード検索すると「POIC」のワードが記載された文献「In vitro カンジダバイオフィルムに対する電解次亜水の効果3)という文献がたった一つヒットしました。

ちなみに、10年前に日本歯周病学会で否定された次亜塩素酸水のパーフェクトペリオ についての論文はたくさんあります。

話を、POICウォーターに戻します。

論文中に、下記に示すように、「POIC」について記述がありました。

NPO法人POIC.研究会より供与された電解次亜水POIC. water ホームケア用タンパク分解型除菌水(Poic と略す,POIC.研究会,東京)

In vitro カンジダバイオフィルムに対する電解次亜水の効果

POICは「電解次亜水」とはっきり明記されています。さらに、目を疑う一文が・・・

特に電解次亜水は化粧品(はみがき類)として製造販売されているものもあり,一般的にオーラルリンスとしての位置づけとして口腔内の使用が認められているが,口腔用の殺菌洗浄剤用としては認められていない。したがって,その用途で使用する場合には歯科医師の裁量権での使用であることを認識しなければいけない。

In vitro カンジダバイオフィルムに対する電解次亜水の効果

文献には、「POIC」という固有名詞がいきなり出てきてしかも電解次亜水でpH8.5で有効塩素濃度115ppmと記述してありました。

機能水の分類から生成装置と生成物さらに文献から、間違いなく

POICウオーター」=「電解次亜水」「次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液」=「タンパク質分解型除菌水

という考察になります。

安全なもの(水と食塩)で安全でないもの(次亜塩素酸ナトリウム主成分の溶液)を生成し、これを安全なものとして、名前を「POICウォーター」もしくは「タンパク質分解型除菌水」として販売していることになります。

このネーミングならバイオフィルムが分解できることを想像させさらに、薬機法も一部パスできてしまいます。

さらに、殺菌洗浄剤として認められていないと言いつつ、歯科医師の裁量権で次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液を使用しても良いという納得のいかない一文

次亜塩素酸ナトリウムなのでバイオフィルム は除去できるのは当たり前!

事実、この液体は、次亜塩素酸ナトリウムが主成分なのでバイオフィルム 除去効果は、抜群です。

このことは、実生活でハイターやカビキラーを使用して台所やお風呂場の汚れを除去しているので説明の必要はありませんねぇ・・・

POICウォーターのバイオフィルム を除去する文献は見当たりませんが、皮肉にもバイオフィルム があまり除去できない次亜塩素酸水であるパーフェクトペリオ を用いた実験データで確かめることが出来ます。4)

下記にその実験結果を示します。

図6:有効塩素濃度の変化によるバイオフィルム 除去効果 
出典:Enterococcus faecalisが形成するバイオフィルムに対する中性電解機能水パーフェクトペリオ®の抗菌効果に関する基礎的研究

上記の図6でも明らかの様に、次亜塩素酸ナトリウムの除去効果は抜群です。

ちなみに、80ppmでも高濃度のパーフェクトペリオ と同等の除去効果です。したがって次亜塩素酸ナトリウムが主成分であるPOICウォーターのバイオフィルム の除去効果は抜群と考えられます。

バイオフィルム 除去効果は抜群なので使用したくなる気持ちはわかりますが、如何せん次亜塩素酸ナトリウムが主成分な溶液なので・・・

次亜塩素酸ナトリウムが主成分でバイオフィルム が除去できるとはいうことは問題なので「POIC」というワードを使用したのでしょうか?

これ結構、凄技というか荒技ですねぇ!

現在、流行っている「鬼滅の刃」風にいうと血気術の使い手の様です。😀

次亜塩素酸系関係は、首を捻りたくなることが多く、しかも罷り通ってしまっている現実・・・

次亜塩素酸水をはじめ次亜塩素酸系は、医薬品あるいは医薬部外品でなく雑貨のために規制がないため野放し状態なので、きちんと規制をしないととんでもないことになるのではないかと危惧されます。

トリハロメタンの危険性!

もし、POICウォーターが次亜塩素酸ナトリウムが主成分のものだとしたら、使用すること自体問題がありますが、さらに、トリハロメタンの発生が懸念されます。

トリハロメタンの含まれた水道水を飲用したり、揮発したトリハロメタンが人体に入ると、腸壁から吸収されて脂肪の多いところに入り込みます。トリハロメタンは脂肪に溶けやすく、なかなか排泄されません。そして、それらは体内に蓄積され、濃縮されていきます。

動物実験では、体重1Kgについてトリハロメタンの量が3mgを越えると、発ガン率が50%以上になるという結果がでています。

トリハロメタンについての記述もありません。とにかくPOICウォーターに関しては情報が不足しています。

実際に第三者機関による調査データの公開がなされていないので信頼に値するデータ等が欠落しています。

POICウォーターを購入してみた!

歯科医院でも導入しているところや患者さんからの質問等もありどういうものなのかすごく気になったので、確かめたいこともあり購入してみました。

歯科医師の裁量とは裏腹に、購入は、大手通販サイトで簡単にできました。

パッケージは、一見オシャレな感じでした。

ちなみに、金額は、500mlで3882円で結構高額なうがい水です。うがい水としては一番高額ですかねぇ?

成分表示等非常にお粗末!でなんと成分は食塩水との表示?

販売名は口腔洗浄液A 洗口液(口腔化粧品)

成分:基材/水 口腔ケア剤/塩化Na

pH:不明

有効塩素濃度:不明

製造年月日:不明

商品の表示を見る限りでは、食塩水ということになります。(ずいぶん高額な食塩水)

やはり危惧していた「まぜるな危険」は明示されていませんでした。この溶液は、酸を加えて、pHが4以下になると塩素が発生して非常に危険です。(この事に関しては、「次亜塩素酸水を人体に使用する疑問の危険なうがい水」に記述してありますので参照してください。)

取扱説明書も同封されておらず、不親切感は否めませんでした。製造販売元は「株式会社エピオス」と明記してありましたので

株式会社エピオスのサイトを見てみましたが、溶液に関する安全情報はありませんでした。

患者さんが希望しているものは?

基本的に、患者さんが希望している情報は「使用方法」「使用上の注意事項」だと思います。さらに、医療関係者としては「製造に関して」「機能に関して」等の情報の開示をしていただけると有り難いところです。

製造に関して

  1. 生成原理(科学的原理)
  2. 装置規格(数値)
  3. 生成水規格(数値)
  4. 公的第三者機関による検証が行われていること

機能に関して

  1. 再現性あるデータ
  2. 科学的根拠のある機能基盤
  3. ユーザーによる簡便なモニター法が開示されている
  4. 公的第三者機関による検証が行われていること

最近は、次亜塩素酸水関係を販売している業者でも、情報を開示しています。開示できないことでもあるのではないかと詮索したくなってしまいます。

そこで、直接会社にコンタクトをとってみました。

実際に電話して確認したが・・・

POICウォーターに関する文献は、検索してもほとんどなく、いくつかの疑問点はありましたが、一番知りたかったことは、pH9のPOICウォーターが口腔内でうがいをされることによりpH7の中性になるという実験に関するデータでした。(POICウォーターの特徴③)

導入している医院のHPをみると、うがいをすると見事にpH9からpHが7に下がると記述してあります。

そこで、文献等を知りたくて直接エピオスに電話して確認してみました。

実験データの文献はないとのこと?

問い合わせたところ、実験のデータはなく、机上の計算によるものとのことでした。担当者曰く、全国で多数の医院で導入されていてそれがすなわちエビデンスになるとのことでした。

人体に使用するものを治験等行わず机上の計算だけで人体に使用するなどあり得ない事です。医療関係に携わっている業者なのにエビデンスに関する認識が・・・

だいぶ微妙な感じでした。

実験をしてみた!

実験データがないので簡単な実験をしてみました。

実しやかに言われている。

有機質に触れると水になるので安全です

このことが、次亜塩素酸水の生命線です。またこのことは、POICウォーターについても同様です。

pH9のPOICウォーターを10ccほど口に含み、20秒うがいをするとpHが7になると言われていることを確かめるために自らさらに当院の衛生士さんと受付さんに協力してもらい簡単な実験をしてみました。

実験方法

図7:実験項目

POICウォーターの原液のpH(Wabisabi社製:pH測定器を使用)と残留塩素濃度(日産化学工業社製:残留塩素試験紙を使用)を測定し、さらに被験者の唾液のpH(アドバンテック東洋社製:BTB pH6.2〜7.8を使用)を計測し、POICウォーターを10ccほど口に含み、20秒うがいをしてもらい、吐き出したうがい後のうがい水のpH(Wabisabi社製:pH測定器を使用)を測定しました。なお、pH測定器は、pH Buffer Powderを使用し3点校正を行いました。さらに、実験をした時間帯は、診療終了後に行いました。

被験者は当院の歯科医師、衛生士、受付の計6名

実験結果

表1:唾液のpHとうがい後のpH

pHと残留塩素濃度

pHは、9.13、残留塩素濃度は約600ppm

うがい前のうがい水について臭いの感想

ほとんどの被験者が若干の塩素臭を感じました。

唾液のpHとうがい後のうがい水のpH

今回の実験では、全ての被験者において著しいpHの低下は認められませんでした。

うがい後の感想

うがい後の爽快感は、全くありません。6名中3名が口腔粘膜に違和感を訴えました。

POICウォーターによるうがいを患者さんに推奨できるかという問いには、全員がNOという回答でした。

POICウォーターでうがいをすると、「鬼滅の刃」の炭治郎のごとく、次亜塩素酸系の臭いに非常に敏感になります。街中を歩いていても次亜塩素酸系の臭いがすごく鼻に着く様になります。

敏感な人は、水道水の次亜塩素酸ナトリウムにも反応する様になります。

考察

今回の実験では、POICウォーターは、口腔内のバイオフィルム等のタンパク質と反応しても中性になりませんでした。

タンパク質と反応して水になるので安全という神話が微妙になりました。

理由としては被験者の口腔衛生状態の良さが考えられますが、高濃度のPOICウォーターは、20秒のうがいでは未反応のPOICウォーターがあるため中性にならないことがわかりました。

また、未反応のPOICウォーターによる細胞障害性も考えられ、使用には考慮が必要と思われました。事実うがいをするとちょっと痛いというかピリピリしました。

さらに、この後、若干のPOICウォーターを口に残し、歯ブラシによるブラッシングをするようですが不快感のためこのドグマ的な行為は行いませんでした。


まとめ

POICウォーターは、食塩を電気分解した電解水

POICウォーターのpH9のものは、電解次亜水で成分は次亜塩素酸ナトリウムが主成分の溶液

唾液と反応してpH9pH7に下がらない場合があり細胞障害性の可能性あり

患者さんに推奨はNG

POICウォーターについては患者さんが詳細な情報を知ることができず、それを歯科医の裁量で販売しているわけで、患者さんからすれば「胡散臭い商品の販売」ということになると思います。

口腔内の殺菌洗浄剤として認められないと謳いながら、実際は、「歯科医院でむし歯や歯周病の予防と謳って使用している」こと、さらに、次亜塩素酸ナトリウムが主成分かもしれない謎の溶液を歯科医院で生成して販売し、成分を開示せず名称をそれらしくして、さらに歯科医師の裁量と言いながら、アマゾンや楽天で簡単に入手可能で、業者の裁量になってしまっています。

何度も、当ブログ(次亜塩素散水を人体(粘膜)に使用する疑問?の「1番の不思議」)で触れているように、医薬品でないものを「予防」「歯周病」と謳っているのですから、明らかに薬機法違反をしていることになり、微妙な感じを拭えないすっきりしないものです。

医療関係で使用するものは、エビデンスの裏打ちがあるものを使用するようになっています。自由診療なら薬機法違反しているものを使用しても良いというものではありません。

当院では、

POICウォーターは、「次亜塩素酸水に関する定義が曖昧なこと」と「次亜塩素庵ナトリウムが主成分の溶液」であり「薬機法違反」であること、さらに、実際に購入していろいろ実験したところ、人体に使用するのは極めて不適切なもので、「患者さんに推奨できない」と考え、取り扱っておりません。

どうも、次亜塩素酸が含まれる液体は、すっきりしないものが多く、あれほど騒がれた次亜塩素酸水も立ち消え感が強く、人体に対する為害性は明確になっておらず、カオスな状態が続いています。

物事は、リスクとベネフィットの両面提示されているものの方が信頼できます。一面提示のものは内容の情報が十分でないので要注意です。

さらに、商品名の詳細(化学式あるいは物質名)が明記あるいは開示されていないものは微妙と考えるのが正解です。

患者さんには、使用されているものの化学式あるいは物質名を確認するようにしてください。

最後に「101匹目の猿」現象を祈っています。


参考文献

1)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

2)次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料

3)柏原稔也, et al. “In vitro カンジダバイオフィルムに対する電解次亜水の効果.” 老年歯科医学 28.3 (2014): 277-283.

4)中村裕子, et al. “Enterococcus faecalis が形成するバイオフィルムに対する中性電解機能水パーフェクトペリオ® の抗菌効果に関する基礎的研究.” 日本歯内療法学会雑誌 31.1 (2010): 29-35.


補足

次亜塩素酸水について

ほとんどの人に認知された次亜塩素酸水ですが・・・

これは、ほとんどが雑貨であり医薬品ではありませんが、唯一、フリーキラ製薬から販売されているものが厚生労働省承認 第2類医薬品として「フリーキラS」という商品名で次亜塩素酸水溶液として販売されています。

どうしても、次亜塩素酸水という方は、フリーキラ製薬から販売されている「フリーキラS」をお勧めしますが、自己責任での使用になります。

ちなみにこれは次亜塩素酸ナトリウムに塩酸を加えて製造したものです。

次亜塩素酸水という信者の方は、だいぶ高額ですがこれをお勧めします。もしトラブル等があっても副作用救済被害制度が適応になります。

もう少し廉価版をご希望の場合は、

①生成原理(科学的原理)、② 装置規格(数値)、③ 生成水規格(数値)、が開示され④ 公的第三者機関による検証が行われている⑤製造年月日等のデータが公開されている製品をお求めください。

当然ですが、雑貨の次亜塩素酸水を使用してトラブル等があった場合は、副作用救済制度は適応にはなりません。トラブルがあった場合は、取り扱い業者あるいは取り扱い機関が対応してくれます。


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