新型コロナウイルス(マスクで予防できるのか?)
Can Masks Prevent Viruses?
2020年1月31日に、国立感染症研究所より、新型コロナウイルスの分離に成功し、ほぼ全長のウイルスゲノムの配列を確定、今後は分離したウイルスを用いて、ウイルス感染機構及び病原性の解析、ウイルス検査法・抗ウイルス薬・ワクチンなどの開発を進めるとの発表がありました。
そこで今回は、現在問題になっているマスクについてフォーカスしてみました。
ところで、従来のコロナウイルスとは?
人に感染するコロナウイルスについて
今までは、ヒトに蔓延している風邪のウイルス4種類と、動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類が知られていました。ところが今回、中国の武漢で今までとは違うタイプのコロナウイルスが出てきたわけです。
風邪のコロナウイルス
ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1です。
風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とすると言われています。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験します。多くの感染者は軽症ですが、高熱を引き起こすこともあります。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)
今から18年前の2002年に中国広東省で発生し、2002年11月から2003年7月の間に30を超える国や地域に拡大しました。2003年12月時点のWHOの報告によると疑い例を含むSARS患者は8,069人、うち775人が重症の肺炎で死亡しました。(致命率9.6%)。
今ではキクガシラコウモリが自然宿主であると考えられています。雲南省での調査では、SARS-CoVとよく似たウイルスが、今でもキクガシラコウモリに感染していることが確認されています。
当時、死亡した人の多くは高齢者や、心臓病、糖尿病等の基礎疾患がある方で、子どもには殆ど感染せず、感染した例では軽症の呼吸器症状を示すのみでした。
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)
MERS-CoVは、ヒトコブラクダに風邪症状を引き起こすウイルスであるが、ヒトに感染すると重症肺炎を引き起こすと考えられています。
最初のMERS-CoVの感染による患者は、2012年にサウジアラビアで発見されました。これまでに27カ国で2,494人の感染者がWHOへ報告され(2019年11月30日時点)、そのうち858人が死亡しました(致命率34.4%)。
大規模な疫学調査により、一般のサウジアラビア人の0.15%がMERSに対する抗体を保有していることが明らかになったことから、何万人もの感染者が存在していることが推察されています。
その大多数はウイルスに感染しても軽い呼吸器症状あるいは不顕性感染で済んでおり、高齢者や基礎疾患をもつ人に感染した場合にのみ重症化すると考えられています。
重症化した症例の多くがSARSと同様に基礎疾患を持った方でした。
ウイルスの特徴
電子顕微鏡で観察されるコロナウイルスは、直径約100nmの球形で、表面には突起が見られます。形態が王冠crownに似ていることからギリシャ語で王冠を意味する「corona」という名前が付けられました。
ウイルス学的には、ニドウイルス目・コロナウイルス亜科・コロナウイルス科に分類されます。脂質二重膜のエンベロープの中にNucleocapsid(N)蛋白に巻きついたプラス鎖の一本鎖RNAのゲノムがあり、エンベロープ表面にはSpike(S)蛋白、Envelope(E)蛋白、Membrane(M)蛋白が配置されています。
ちなみに、冒頭のアイキャッチの写真が、国立感染症研究所により開示された今回の新型コロナの電子顕微鏡による写真です。
ウイルス型特徴からサージカルマスクは?
コロナウイルスの直径は100nm(0.1μm)と極めて小さいです。
サージカルマスクは直径5μmまでの粒子を遮断することができますが、細菌の大きさは約1μm、ウイルスは0.02~0.1μm程度のため、サージカルマスクを通過してしまいます。
しかし、咳やくしゃみで飛散する際には、粒子の周りに水分を含んだ直径約5μmの飛沫となると言われています。飛沫だけを考えるとサージカルマスクによって遮断することが可能です。
ところで、感染しないように医療関係者がしている様子をテレビ等でみたことがあると思います。感染予防をするにはガウンを着たりメガネをしたり手袋をしなければすることができません。マスクはサージカルマスクではなくN95をしています。
N95マスクは、0.075μm以上の微粒子を95%以上遮断し、かつ着用している部分からの空気の漏れ率を10%以内に抑える機能のあるマスクなのでこれなら大きさから考えると遮断は可能です。
実際着用すると、普段マスクをすることに慣れている医療従事者でも耳が痛く頬までも痛くなりさらにかなり息苦しくなります。
30分以上しているのは辛く、1日8時間着用するのは現実的ではありません。
ところで、予防するには厳つい様相の個人用防護具PPE(Personal Protective Equipment)をして行っていますが、この厳つい様相のガイドラインの大元を出しているのが感染症対策の世界最強機関であるCDC(Centers for Disease Control and Prevention)です。
世界の医療関係の現場の感染症対策は、CDCのスタンダードプリコーションを基に行われています。
そこで今回の新型コロナウイルスについてCDCが出している予防策を見てみました。以下の写真は予防について記述した部分のスクリーンショットです。
ワクチンはまだないから始まり、毎日の予防処置として手を20秒洗ってくださいとかアルコールベースの手指消毒剤を使ってくださいとか、洗っていない手で目、鼻、口を触らないでください等、記述してありますが・・・
ところが、マスクをしなさいとは記述されていません。
注目は、下記の一文で
Cover your cough or sneeze with a tissue, then throw the tissue in the trash.
咳やくしゃみは、テッシュでカバーして、テッシュをゴミ箱に捨てなさい。
と記述してあります。
湿性感染物は持っているのでなく捨てなさいということです。つまりマスクをして咳をするとマスクに感染物が蓄積されるので逆に感染源になるのでよくないということでしょうか?
ただし、咳エチケットを考えるとマスクは重要かもしれませんがマスクも適切な取り扱いをしないと予防どころか逆に感染源になってしまうということです。
また、CDCはインフルエンザと同様な予防策を推奨しています。それは手洗いの励行と手洗いをしていない手で目や鼻や口を触らないことです。
CDCの現在の見解は、マスクを着用することは推奨していません。
他の機関の意見は?
他の機関としては、厚生労働省、国立感染症研究所あるいは日本感染症学会ですがマスクの効果については明言は避けています。
ちなみに厚生労働省は下記の様に記述しています。
”ある程度、飛沫感染等を防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することは一つの防御策と考えられます。”
ある程度とは冒頭で述べた飛沫の5μmまでということです。
コロナウイルスの感染は飛沫感染が主で、咳やくしゃみによりウイルスが伝播されることにより生じるとしています。したがって、インフルエンザに対する予防と同様に、「咳エチケット」、「手洗い」などの感染対策が有効としています。
インフルエンザの感染経路を考えると「飛沫感染」と「接触感染」が考えられるからです。
サージカルマスクは・・・
サージカルマスクはサージカルというぐらいなので、本来、手術をする際に、術者と患者さんを湿性生体物質から守るために作られたものなのです。
そのため、細菌やウイルス等の大きさのものを遮断するために作られたものではありません。
ただし、花粉等の大きさなら十分に遮断することができるので、正しく装着すれば効果は十分あるため使用されています。
まとめ
現時点ではマスクの有効性についてのエビデンスはない
サージカルマスクは5μmまでの大きさのものは遮断できる
最新の情報を定期的に確認の必要性あり
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外部リンク
厚生労働省: 新型コロナウイルス感染症について
日本感染症学会:新型コロナウイルス感染症
国立感染症研究所:新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報について
CDC:About 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV)
WHO:Novel Coronavirus(2019-nCoV)
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