魔法の水

Magic water

魔法の水

魔法の水と言っても飲むと若返るとかそういうものではありません。抗菌や消臭ができる次亜塩素酸電解水の話です。

当ブログで以前、洗口剤について投稿しましたが…

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧:薬事法のことで以下、薬機法と略します)の関係でちょっとグレーなので洗口剤には入れませんでした。(これについては後ほどご説明します。)

「微酸性電解水」は、「次亜塩素酸電解水」=「タンパク質分解型除菌水」(以下、微酸性電解水といいます)といろいろな表現をしますが、次亜塩素酸がpHで変化し呼び方が変わると考えればいいと思います。(正確には、違いますので「次亜塩素酸水を人体(粘膜)に使用する疑問」と「POIC®︎ウォーターに対する疑念」を参照してください。)

本日は、「魔法の水」=「微酸性電解水」についてのお話です。

微酸性電解水の洗口効果は凄い!

口の中の虫歯菌や歯周病菌を10秒間うがいすることにより、ほぼ完全に殺菌?(殺菌というワードは、薬機法で問題ありなので後ほど触れます。)することが出来るのが微酸性電解水です。本日のテーマの「魔法の水」のことです。

この「魔法の水」は2005年ごろ発表され、当時はマスコミ等で取り上げられ結構話題になりました。パ○フ○ク○ペ○オといい、いかにも歯周病が完璧に治ってしまうことをイメージさせるネーミングでした。ところで微酸性電解水とは何?

微酸性電解水とは?

図1

電解水(Electrolyzed water)とは、水道水や食塩水などを電気分解することで得られる水溶液の総称です。

表1

微酸性電解水は、表1に示すように、PHが5〜6.5の酸性の電解水です。使用に関しては、食品添加物、特定防除資材として許可が出ています。

詳しくはこちら

歯科でのスタンスは?

微酸性電解水は、常在菌や身体への影響がほとんど無い状態で、歯周病菌や虫歯菌を破裂させて溶かす(溶菌)効果があり、お口の中の歯周病菌や虫歯菌を、ほぼ完全に殺菌できますので、歯周病治療、虫歯予防に加え、口臭の原因物質を作っている歯周病菌も殺菌できることから、口臭治療にも効果的ですという謳い文句です。その効果は凄いもので効果絶大の様な印象を受けました。セールスポイントをいくつか列挙すると…

薬でないため耐性菌や副作用の心配がない

従来、虫歯菌や歯周病菌の殺菌には抗生物質などの薬を使用していましたが、これらはアレルギーや副作用などの問題と、その薬に対する耐性菌(菌が薬に慣れてしまうと薬の効果がなくなる)の問題がありました。微酸性電解水は薬剤ではなく、白血球と同じ成分であるためアレルギーや副作用の問題が限りなく少ないそうです。また細菌への攻撃方法もバイオフィルムを破壊し細菌を溶かしてしまう溶菌によるため、耐性菌が発生することも限りなく小さいそうです。

粘膜を傷めない

うがい薬や洗口剤は、その効能が強いほどお口の中の粘膜である上皮細胞を傷つけ、お口の中が荒れる原因となりますが、微酸性電解水はその心配はないと言われています。

某電機メーカーも販売しているし浦安のアミューズメントパークでも使用している

最近では、○ア○ー○という商品名で次亜塩素酸空間除菌脱臭機と銘打って販売しています。浦安のアミューズメントパークではトイレの手洗いの水として使用しています。

効果は絶大!

図2

図2に示すように、毒性は低く、殺菌力も高く、効果に関しては文句は言うところはなく「素晴らしい」の一言しか出ません。早速、自医院にも導入しないと!

すごく心動かされた!

正直、2005年に発表されて際に当院での導入を考えました。導入にあたり文献等を調べていました。薬ではないがために逆にその際に、薬機法(2014年に薬機法に改正されました。当時は薬事法でした。)に触れる部分が気になっていました。

さらに、表1に示すように、医療機器への使用は許可されていないことも気になるところでした。そうこうしているうちに日本歯周病学会から、研究途上の段階で科学的根拠が不十分であるので、安全性や有効性について学術的な場で充分な討議が行われた後に、臨床に応用されるべきであるという発表がされました。

要するにNGということです。

それ以後、微酸性電解水に関する知見はほとんどみられなくなりました。権威ある学会の意見はそれなりのものがあるということでしょうか?

そこで、改めて歯周病治療のガイドラインを見てみました。

歯周病治療のガイドラインには?

「現在、我が国で行われる歯周病治療のガイドラインでは、先ずブラッシングによる歯肉縁上プラーク除去を行い、続いて歯肉の縁下プラークに生息する歯周病原性細菌を様々な処置により除去する。その後に歯周組織を修復、再生させるというもの」

この治療のステップは、世界中の先進国にて行われている研究結果を集積した科学的根拠に基づいて確立された治療ステップであり、その方法が世界各地で確実に歯周病の治療成績の向上をもたらしている背景となっています。と記述されていました。

歯肉縁上に適切なブラッシングを行い、歯肉縁下にも適切な処置をするということが書いてあります。洗口剤を用いて歯肉縁上のプラークを積極的に除去とは記載されていません。

やっぱりお口クチュクチュでは?

洗口剤はポケットの中の菌は殺菌することはできないのであくまでも補助的なものということ、ポケット内の治療を薬剤等を用いて除菌しても結局のところメンテナンスを怠ると再発してしまうこと、別の薬剤でも代用可能なこと等で導入は見送りになりました。

微酸性電解水の二番煎じなるものが出てきた名前は「タンパク質分解型除菌水」

タンパク質分解型除菌水と名前を変更して再度登場してきました。効果は前回と同様です。若干の改良点はある様です。今回は薬機法もクリアのネーミングにしての登場です。ネーミングに関してはこれなら大丈夫ですねぇ?

「殺菌」「消毒」「除菌」「消臭」をちゃんと使い分けているか?

表2

きちんとしたメーカーは、薬機法を遵守しています。ある意味これがその業者を見極める指標になります。サイト等の紹介が「除菌」に統一されていて「殺菌」「消毒」というワードは見られなければOKです。逆に微酸性電解水に「殺菌」「消毒」というワードが見られたら注意が必要です。このことは歯科医院のサイトにも同様なことが言えます。

もし自医院のサイトで、薬機法に触れるNGワードを使用した場合は、明らかに薬機法違反になるからです。

「滅菌」「殺菌」「消毒」「抗菌」についてはこちらを参照してください。

「予防」や「治療」人体への作用表現はNG

「微酸性電解水で歯周病を予防」「微酸性電解水でうがい」という表現は、NGです。魔法の水が医薬部外品の認可を取得すれば問題はありませんが…

これに関しては、可能性は希望薄と思われます。理由は、医薬品、医薬部外品の認可を取るのはハードルが高く、微酸性電解水は除菌、消臭ができる機能水として認知されているからです。現時点では、厚生労働省は食品添加物と認可しているもののそれ以外ではゴーサインは出していません。

難しい現状?

TVやマスコミ等で取り上げられるとその反響はすごく、患者さんからの質問があるのも実際のところです。正直なところ、薬機法との関係と実際の効果等の説明をしなければなりません。薬機法を守っていることが微酸性電解水の効果や安全性を証明するものではありません。しかしながら決まりを守らなくてもいいのかというとこれもまたちょっと?

学会からのポジションペーパーが早く出るのを祈るばかりですが、前回の魔法の水とほとんど変わりがないので出るはずもありません。医療機器への応用の認可がないためこれまた許可待ちの状態です。(表1)

自費診療オンリーにして使用すれば問題ないと思いますが、現実的には難しいところです。

自医院のサイトで、薬事法違反をしていますよと宣伝するのも如何なものかと?もし、宣伝する場合は、ワードに注意してください。

しかしながら、図2に示すように、効果効能は高く、利用価値も非常に高いと思われます。あと問題になるのは薬機法と厚生労働省の医療機器への許可待ちです。

当院としては、薬機法を遵守し、患者さんには十分ご理解をいただいて、あくまでも補助的なものとして使用していただくスタンスです。

まとめ

微酸性電解水は機能水

薬機法に要注意

微酸性電解水は利用価値が大きい


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