コロナで注目された歯磨き粉の成分とは?
Ingredients of toothpaste that attracted attention in the new corona
以前、当ブログで、石鹸が新型コロナウイルスを不活化できるとして「石鹸の効果について」アップしました。
石鹸は、界面活性剤の一つですが、界面活性剤の親油基の分子がウイルスの外殻の脂質二重膜に引き寄せられ、ピラニアの群れが獲物に食いつくようにウイルスの脂質周囲に集まってミセル(高分子の集合体)を作り、脂質を引き剥がしています。
そしてエンベロープが破壊され、ウイルスが不活化してしまうというメカニズムは、ほとんどの人に認知され、今や、手洗いを世界中の人が行っています。
「手洗い」をすることは、ウイルスを体に入れなくするために行っているマスト行為です。
ところが頑張って行っても不幸にも口の中にウイルスが入ってしまう場合はあります。
感染のメカニズムから考えると・・・
新型コロナウイルスは、図1に示しように、ウイルスのエンベロープの一部であるスパイクタンパク質が人間のACE2受容体と結合して体内に侵入することが出来ます。1)
また新型コロナウイルスは、体内に侵入するにあたり、プロテアーゼ 依存性があるので、プロテアーゼ は細胞に侵入するには必要不可欠なものと考えられます。2)
したがって、プロテアーゼ が無くなれば新型コロナウイルスは体内に侵入できません。
さらに、エンベロープの構造を破壊してしまう、あるいは、スパイクタンパク質に何かを結合させてしまえば、ウイルスのスパイクタンパク質がACE2受容体と結合できず、ウイルスは体内に侵入できません。(新型コロナウイルスの構造についてはこちら)
界面活性剤の一種である石鹸で手洗いするのは、エンベロープの脂質部分をミセル化して引き剥がすことで、ウイルスを破壊してしまうことを狙っています。
不幸にも口の中にウイルスが入っても、手洗いと同様に界面活性剤の攻撃を行えば良いことになります。
流石に、石鹸は使えません。
普段、歯磨きで使用している歯磨き粉は、歯磨きをすると泡が発生します。発泡剤として界面活性剤の「ラウリル硫酸ナトリウム」がほとんどの歯磨き粉に含まれているからです。
ちなみに、今お使いの歯磨き粉の成分を確認してみてください。
「ラウリル硫酸ナトリウム」を好まず、含有されていない歯磨き粉を使用している人以外は、ほとんど成分表示で確認することができると思います。
「ラウリル硫酸ナトリウム」は発泡剤として使われているので、泡が出て、磨いた気になるので、普段はどちらかというと衛生士さんに敬遠されがちな成分です。
衛生士さんには、発泡剤がない歯磨き粉を勧められていると思いますが・・・
新型コロナウイルスを不活化してくれるものとして、今までは、歯磨きには邪魔扱いされていた、歯磨きにはあまり必要ないと思われていた発泡剤である「ラウリル硫酸ナトリウム」が、見直されています。
しかしながら、これらに関してのエビデンスはありませんので、可能性の範疇のお話になります。
また、「ラウリル硫酸ナトリウム」の安全性については賛否がありますので、十分に情報を入手して検討をお願いします。
しかしながら、うがいや歯磨きをすることによって口腔内の菌が少なくなることは紛れもない事実です。
ACE2受容体は舌にあるので
新型コロナウイルスの宿主側の入り口であるACE2の受容体は、舌に多く分布していますので、(「ACE2受容体と口腔内ケア」を参照してください。)歯磨きに加えて、舌磨きも追加していただけたら更に効果的と思われます。
帰宅したら
「手洗い」「うがい」に「口腔内ケア」(歯磨きに舌磨きも加える)をプラスして頂いたら如何でしょうか?
諸事情で難しい方は、せめて「就寝前」と「起床時」に行う様にしていただけるといいと思います。
舌の磨き方のポイントは「後ろから前にかき出す」様にすることです。「インフルエンザ予防の歯磨き」を参照してください。
まとめ
ラウリル硫酸ナトリウムは新型コロナウイルスを不活化できる可能性がある
口腔ケアを界面活性剤で行うことで手洗いと同様な効果が得られることが考えられます。
この主な効果は、界面活性剤によるウイルスの不活性化ですが・・・
さらに、新型コロナウイルスの感染のメカニズムを考えると、プロテアーゼがウイルスの侵入を活性化することは事実であり、口腔ケアによるプロテアーゼ産生菌とプロテアーゼの除去等も可能です。
ちなみに、新型コロナウイルスの感染性を口腔細菌のプロテアーゼが促進するというエビデンスはありませんが、インフルエンザ等ではすでに明らかになっています。3)4)
改めて、口腔ケアは非常に重要だと思われます。
「口腔ケア」を、予防対策としての「手洗い」「マスク」「ワクチン」にプラスしてみたら如何でしょうか。
参考文献
1)田口文広, and 松山州徳. “コロナウイルスの細胞侵入機構.” ウイルス 59.2 (2009): 215-222.
2)松山州徳. “プロテアーゼ依存的なコロナウイルス細胞侵入.” ウイルス 61.1 (2011): 109-116.
4)奥田克爾, et al. “口腔ケアによる誤嚥性肺炎予防.” (2005).
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