石鹸の効果について

医療従事者の診療における手洗いは、ほとんど無意識の行動として行われています。これは、感染対策の基本が手洗いによるものだと認知しているからに他なりません。

手洗いに用いるものは石鹸です。そこで、石鹸について探求してみました。

石鹸とは?

一般に汚れ落としの洗浄剤を指し、化学的には高級脂肪酸の総称です。

石鹸は界面活性剤

界面とは、互いに性質の違う二つの物質が接する境の面ことを言います。

例えば、水と油は交わらないので境界面の界面が発生します。

石鹸はこの界面に働きかけて界面の性質を変える働きをします。石鹸は、そのものに水になじみやすい部分と油になじみやすい部分の両方を持っています。

これが界面(水と油=水と油汚れ)に働いて、洗浄作用などの生活に役立つ作用を起こす性質を持っています。このような物質を「界面活性剤」といい、石鹸もそのひとつです。

最近は、様々な界面活性剤が発売されて選ぶのに迷ってしまいます。

ところが昔からある天然石鹸成分の「オレイン酸カリウム」がインフルエンザウイルスの感染に必要な「スパイクタンパク」に吸着することでウイルスを不活化し高い抗ウイルス効果を発揮することがわかりました。1)

ヒトインフルエンザウイルスにおいて、オレイン酸カリウムは、シャンプーやハンドソープなどに用いられる合成界面活性剤であるラウレス硫酸Naとラウリル硫酸Naよりも、1,000倍以上高い抗ウイルス効果を示しました。1)

このことは、エンベロープをもつウイルスにも効果があるのではないかと言うことを推測させます。

石鹸がウイルスに効果ありビデオ

米国の蛋白質構造データバンクが製作した動画「Fighting Coronavirus with Soap」の一部

石鹸の親油基の界面活性剤の分子がウイルスの外殻の脂質二重膜に引き寄せられ、ピラニアの群れが獲物に食いつくようにウイルスの脂質周囲に集まってミセル(高分子の集合体)を作り、脂質を引き剥がしています。

そしてエンベロープが破壊され、ウイルスが不活化してしまうというメカニズムです。

ただし、エンベロープの構造を持ったウイルスだけです。エンベロープの構造を待たないノンエンベロープウイルス(ノロウイルス等)には不活化する効果はありませんが、2回の石鹸で手洗いすることでウイルスを洗い流すことが可能です。

手洗いはやはり重要です。

石鹸豆知識

セッケンには、「セッケン」「石けん」「せっけん」「石鹸」など4種の表記法があり、これらの用語には界面活性剤を意味する場合と界面活性剤を主剤とした製品を意味する場合がありますが、化学分野では界面活性剤を「セッケン」、製品を「せっけん」と表現する決まりになっています。

化粧品成分オンラインより

参考文献

1)Kawahara, Takayoshi, et al. “Inactivation of human and avian influenza viruses by potassium oleate of natural soap component through exothermic interaction.” PloS one 13.9 (2018).


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