手指衛生について
F Cary Snyder現在では「インフルエンザ」や「ノロウイルス」や「かぜ」等の感染対策として当たり前の様になった手洗いですが、信じられないことに、1980年代になるまでガイドラインがありませんでした。
ちなみに、主宰者が学生の時は、現在では交差感染が起こるので行われていないベースン法で手洗いが行われていました。
手洗いの父
上記のビデオは、去る3月20日にGoogleの検索ページに使われたものです。Googleは、COVID19の感染拡大に手洗いが重要と考え、手洗いの父であるセンメルヴェイス・イグナーツ・フュレプをDoodleとして使ったのかも知れません?
Googleの検索ページの検索窓に何も入れずに「I’m Feeling Lucky」をクリックするとGoogleのDoodleのページに行くことができます。Doodleは日本語にすると「悪戯書き」です。Googleの検索の表紙は意外と意味深です。
doodleについてはこちら
doodleのアーカイブはこちら
Recognizing Ignaz Semmelweis and Handwashingについてはこちら
今から、170年以上の前の話ですが・・・
センメルヴェイス・イグナーツ・フュレプというドイツ系ハンガリー人の産婦人科医がウィーンの病院に勤務していました。その病院では、産科医による出産は、一般的な助産師による出産と比べ死亡率が何と3倍も高くなっていたのです。
そのことを疑問に思ったセンメルヴェイスは、いろいろ調査した結果、1847年、次亜塩素酸カルシウムで手を消毒することで劇的に産婦の死亡率を下げることが出来ることを発見し、彼は手洗いが死亡率を下げることを示しました。
ところが、当時の医学界には全く受け入れられませんでした。
お医者さんの自分の手が汚いから、それが感染源となって人が死んでしまうとはその時代のお医者さんは考えなかったのです。
しかし彼の死後、ルイ・パスツールが細菌論を、ジョセフ・リスターが消毒法を確立し、そのお陰で彼の理論は広く認められるようになりました。
そんな訳で、センメルヴェイス・イグナーツ・フュレプを「手洗いの父」と呼んでいます。
次は、現在の手洗いの方法について見てみます。
手洗いの種類
手洗い方法からみた分類
スワブ法: (清拭法) 消毒薬を染み込ませた綿球やガーゼで拭き取る方法。消毒薬をたっぷりと浸すこと が重要であり、皮膚と消毒薬が一定時間以上接触している必要がある。
スクラブ法: (洗浄法) 洗浄剤を配合した手洗い用消毒薬を使ってよく泡立てて擦った後、流水で洗い 流す方法。洗浄と消毒が同時に行える。
ラビング法: (擦式法) アルコール擦式製剤を手掌にとり、乾燥するまで擦り込んで消毒する方法。特別な 手洗い設備を必要としないため、簡便に手洗いができる。
ベースン法:(浸漬法)ステンレス製の桶に消毒薬を満たし、手指を浸して消毒する方法です。患者さん毎に交換するのであれば問題ありませんが、繰り返しの使用では交差感染の恐れがあるため現在では行わなくなりました。
清潔度から見た分類
日常的手洗い: 食事の前後やトイレの後など日常の介護において行う、石けんと流水を用いた手洗い。
衛生的手洗い: 患者のケアなどの医療行為の前後に行う、消毒薬と流水又は、アルコール擦式 製剤を用いた手洗い。
手術時手洗い: 手術の前に行う消毒薬と流水やアルコール擦式製剤を組み合わせた厳重な手洗い。
手洗いでどのぐらい菌はなくなるのか?
ところで、手洗いでどのぐらいウイルスが少なくなるのかという話ですが・・・
手に付着したウイルスがどのぐらい手洗いで少なくなるか調べた実験があるのでご紹介します。(文献こちら)
図1に手洗い方法による残存ウイルス数について上記の文献でのデータを基に表にしたものを示します。
アルコールが手に入らなくても、きちんと手洗いすれば全く違います。
少なくても流水で15秒以上手洗いするようにしてください。それだけで手に付着しているウイルス等は1/100に減少します。
手洗いの方法を変えるとさらに効果的ですが、当院ではモディファイして行っています。
洗い残しが多い部分
洗い残しが多い部分は上記の図に示すように部位がすでに分かっています。
CDCの手洗い
CDCの手洗いについてはこちらをご覧ください。
CDCは、手洗いを「5ステップ」で行うことを推奨しています。
ほとんどの医院がCDCの洗い方もしくはWHOが推奨している洗い方を改良して行っています。
洗い残しの部分や手洗いの時間等が文献等ですでに分かっていますのでそれを参考にして改良すれば良いわけです。
当院オリジナル日常的手洗い
当院では、感染対策がCDCのスタンダードプリコーションがエビデンスによって施行されていることを鑑み、CDCとWHOの推奨している手洗いを改良して実施しています。
日常的手洗いと衛生的手洗いの中間的なスタンスの手洗い方法です。手洗い時間は、2分ほどかかります。
適切な手洗いをするには時間がかかります。
手洗い前にすること
爪は短く切っておくこと
時計や指輪は外しておくこと
腕まくりをする
余談ですが、一流の外科医や医療従事者で爪の長い人はいません。また、指輪や腕時計をして診療している人もいません。逆に言えば、指輪や腕時計をしている人は、一流ではありません。ある意味では、一流か三流かの見分け方のメルクマールになるかも知れません。
既婚者なのに、指輪をしてなかったら医療従事者かも知れません。
どうして指輪等を外すのかというと、説明するまでもありませんが・・・
金属製のものはウイルス等が長い間付着していることと、装着していることにより、その部分が十分に洗うことができないからです。
(文献はこちら)
要するに不衛生ということです。
特に小さいお子さんを育てている方や高齢者の介護をしている方は外すことをお勧めします。
この方法を日常生活でも取り入れて頂ければ感染対策になると思います。
手洗いを日常の習慣にすればインフルエンザ等の感染症の対策にもなります。
感染対策の基本は、なんと言っても「手洗い」です。
追記
「かぜ」には抗菌剤は効きません!
あなたは、かぜに罹った時どうしていますか?
一般的に、かぜは、ウイルスが喉や鼻等の粘膜にくっ付いてウイルスが体の中で増殖して、くしゃみ、鼻水、せき、たん、のどの痛み、発熱などの症状が出た時を言います。
かぜの原因はウイルス
かぜの原因はウイルスによって起こります。かぜの原因は、細菌ではありません。抗菌剤は字のごとく菌には効きますがウイルスには効きません。
かぜの症状は、体がウイルスと戦っているサインです。かぜを治すのは、あなたの体の免疫力で治しているのです。
薬は症状を和らげるもの
お医者さんが処方してくれる薬や薬局で販売されてる薬は、症状を和らげてくれるものなのです。ウイルスを殺す薬はありませんよ!
感染症の対策は手洗い
ウイルスや細菌からの感染を予防するには、手洗いが一番有効です。手洗いを励行してください。
日頃の「適切な手洗い」があなたを菌やウイルスから守ってくれます。
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