コロナ禍での歯みがきについて

About etiquette toothbrushing

歯科関係者の間では共通認識であるコロナ禍における歯みがきの仕方ですが・・・

学校あるいは職場では、歯みがきをすることによる飛沫が新型コロナ感染の原因になるということで、食後の歯みがきが敬遠されるようになってしまいました。

しばらくして、歯みがきをしないためか、マスクをする事による口呼吸が原因なのか、はたまたコロナで定期検診をしなくなってしまったためか、臨床においてむし歯や歯周病の患者さんを散見する様になりました。

これは一大事ということで、「日本歯科医師会」、「日本小児歯科学会」、「日本学校歯科学会」等からコロナ禍におけるニュースタイルの歯みがき(以後、「エチケット歯みがき」と呼びます。)が紹介されました。

ざっくりいうと今まで行っていた歯みがきを口を閉じて行う様にして唾液飛沫が飛ばないようにした歯みがきです。

コロナ禍で食後の歯みがきはどのぐらいしているのか?

図1:コロナ禍における保育園・幼稚園・こども園・小学校での昼食後の歯みがき

冒頭でも触れたように、コロナ禍において食後の歯みがきを中止してしまったところが多い様です。

ところで、どのぐらいコロナ禍において食後の歯みがきをしているのかというと・・・

エビデンスの様なものはありませんが、図1に示すようにライオンによるインターネット調査があります。

・期間:2021年3月11日(木)~2021年3月15日(月)

・方法:インターネット調査

・対象:園児(保育園、幼稚園、こども園)または小学生の子どもがいる母親 205名

母集団が少ないのが気になりますが、コロナ禍においても、保育園・幼稚園・こども園・小学校においてなんと50%も昼食後の歯みがきを行っていました。逆に考えると小さいお子さんをお持ちの母親の半分は少なくともエチケット歯みがきの仕方を認知していることと考えられますが、この考察は時系列的に無理があります。

なぜなら、歯科関係からエチケット歯みがきについてプレスリリースされたのが2021年の5月ごろだからです。とはいうものの関係学会から、昼食後の歯みがきについては現行の口を閉じる方法でないものが発信されていました。

ここからは、想像の範囲での話になってしまいますが、インターネット調査時は口を閉じないで行っていたかあるいは口を閉じて行っていたかのどちらかになります。どちらにしても唾液の飛沫のことはすでに認知情報でしたのでそれなりの対策をして行っていたと思われます。

それにしても、コロナ禍においてほぼ半分で行われていたのは驚きでした。

ちなみに、当院に来院している学校関係者に学校での昼食後の歯みがきについて聞いたところ、中止しているところが多く、当然、エチケット歯みがきについての認知度は低めでした。

エチケット歯みがき

図2:エチケット歯みがきのポイント

図2に示す様に、唾液飛沫を飛ばさない様にいくつかの事に留意することがポイントです。

ポイントで、意外と重要で忘れがちなことが手洗いです。手洗いは感染対策の基本です。必ず行うようにしてください。

歯科関係の団体から秀逸な「エチケット歯みがき」の方法のビデオが発信されています。

歯みがきはコロナウイルスを不活化する?

以前、当サイトにアップしたコロナ禍で注目された歯磨き粉の成分とは?で触れた歯みがき粉の成分に含まれている「ラウリル硫酸ナトリウム」ですが・・・

コロナ禍になるまでは、歯科関係者の間では、発泡剤が故に、泡が立つことにより磨いた気になってしまうことから敬遠されていました。さらに、発癌性やすぐ体に吸収されて為害性があるなど、どちらかと言ったら含まれていない歯磨き粉をお勧めしていました。

ところが、コロナ禍で、ウイルス表面の脂質二重膜構造を破壊し、ウイルスを不活化する可能性があるという事で脚光を浴びることになってしまいました。

この事に関して、第80回日本公衆衛生学会総会にて関根由良らによって「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する歯磨剤の不活化効果とそのメカニズム解明」と題し、発表されました。試験管内の実験によるもので、明らかにウイルスは不活化されていました。

口腔内でのウイルス不活化効果を実証するものではありませんが、ウイルス感染対策としての歯みがき粉を使用したブラッシングの有用性を示すものと考えられます。

まとめ

ウイルス感染から身を守る方法として、ウイルスをブロックする唾液のIgA抗体が関係していることは予防知識のリテラシーが高まる事により、ほぼ、国民の共通認識となりつつあります。

しかし、IgAが効果的に働くには、口腔が清潔であるという前提条件があります。食後の歯みがきは口腔を清潔にするために必要条件と考えられます。

ところが、唾液飛沫がコロナの原因になるということがわかり、歯みがきは敬遠されることになりました。しかし、歯みがきが免疫力を上げることもまた事実です。

解決方法として、唾液飛沫が飛ばない歯みがきの方法をすれば良いことになります。学校や職場あるいは出先で適切な食後の歯みがきを習慣化することにより、IgAが効果的に働き、その結果、免疫力が向上する事になります。

Withコロナにおいて免疫力をあげることは、ほぼ国民全員が行っています。ちなみに、ワクチンを打つことはその最たるものです。

口腔を清潔に保つことにより、免疫力を上げることになります。その結果、インフルエンザや新型コロナ等の呼吸器感染症を予防することが可能になることになります。

つまり、食後のエチケット歯みがきを行うことによって免疫力を上げることができるのです。しかしながら、今までの歯みがきとはちょっと違います。以前の歯磨きは、ミラーで歯ブラシが適切に当たっていることを確認しながら行っていました。エチケット歯みがきは口を閉じて行います。したがって、適切に行われているかが重要です。

自分ではエチケット歯みがきが適切に行えているかチェックするのは難しいので、かかりつけの歯科医院にて確認してもらうことをお勧めします。

健康を保つために「歯磨きは一丁目一番地」であることをお忘れなく!


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