スカベンジャー(酵素について)

Scavengers(About enzymes)

活性酸素と歯周病ついての関連事項として活性酸素を打ち消す作用を持つ抗酸化物質(スカベンジャー)についてのお話です。

体は活性酸素によって酸化されて錆び付いてボロボロになってしまいます。ところが酸化しない様に人間には「抗酸化物質」(スカベンジャー)を産生する能力が備わっています。

さらに、スカベンジャー を摂取することによって酸化を防ぐことが可能です。

スカベンジャー」は、「scavenger」と綴ります。元々の意味は、ごみやくずを拾い集めて生活する人のことですが、体内の不要物質や毒性物質を処理する器官・細胞・物質などを指して使用しています。

活性酸素を語る場合は、毒性物質を処理する物質である抗酸化物質スカベンジャーと言っています。

スカベンジャーの種類

「酵素」「ビタミン」ポリフェノール」等があります。

「酵素」は、人間が自ら作り出すことができます。

「ビタミン」「ポリフェノール」は摂取することになります。

タンパク質」は抗酸化力はありませんが、修復するのに必要なので抗酸化物質にしました。

それでは、ざっくりご説明します。

酵素について

まず、酵素についてです。

人間の体には、活性酸素を消去する「スーパーオキシドディスムターゼ」「ペルオキシダーゼ」「カタラーゼ」などの「酵素」があります。

スーパーオキシドディスムターゼ

スーパーオキシドディスムターゼ (Superoxide dismutase)舌を噛みそうな名前なのでSODと略していう場合が多い様です。この酵素は、活性酸素のスーパーオキシドを消去する酵素です。1)

1969年に、マッコードとフリードヴィッチによって発見されました。

酸素消費量に対するSODの活性の強さと、寿命に相関があると言われています。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動神経細胞が選択的に障害を受ける神経変性疾患ですが、発症メカニズムに基づいた効果的な治療薬・治療方法は明らかになっていません。

ALSを引き起こす原因の一つとして、SOD1遺伝子変異と考えられています。

さらに、ダウン症の人のSOD酵素活性は、正常人の1.5倍あり、良さそうに思われますが、 SODで生成された過酸化水素を分解するペルオキシダーゼとカタラーゼが1.5倍ないため活性酸素である過酸化水素が分解できず老化の原因になると言われています。

とくに人間はSODの活性の高さが際立ち、ヒトが長寿である原因のひとつとされています。

ペルオキシダーゼ

スーパーオキシドはSOD によって過酸化水素に変換され、さらにペルオキシダーゼによって無害な水になります。

実は、唾液にもペルオキシダーゼが含まれています。物を食べるときに噛めば噛むほど唾液が出るので、よく咀嚼して噛むと活性酸素(過酸化水素)をペルオキシダーゼが不活化してくれるので癌の予防になるともいわれています。2)

唾液の働きの一つとして取り上げられるファクターです。

脱線しますが、テレビの刑事ドラマでよく耳にする、血痕の鑑別時に行うルミノール反応ですが、血痕と思われる斑点にルミノールの塩基性溶液と過酸化水素水との混液を噴霧します。そして血液があると青白く光るというものです。

原理は、ざっくりですが、血液の中の赤血球にはヘモグロビン( hemoglobin )というタンパク質が含まれており、ヘモグロビンにはヘム( haem )という鉄の錯体が含まれています。このヘムが触媒となってルミノール反応が進行します。

血液が拭き取られ、時間が経って乾いてしまっても、微量の鉄錯体が残っているのでルミノール反応が起きてしまいます。

この性質を利用して血痕検出に用いられています。

要するに血液は、ルミノール反応を起こす触媒ということになります。ちなみに、過酸化水素を分解してしまうものは触媒になってしまいます。ペルオキシダーゼも過酸化水素を分解してしまいますので、ペルオキシダーゼでもルミノール反応は起きてしまいます。

ペルオキシダーゼを用いると捜査の撹乱になるかもしれません😀

ちなみに、次に説明するカタラーゼでもルミノール反応は起きてしまいます。

カタラーゼ

活性酸素の過酸化水素を消去する酵素で、過酸化水素を水と酸素に変える酵素です。したがってカタラーゼに過酸化水素をかけると酸素としての泡が発生します。

この現象を利用して、臨床では、歯性感染症で膿瘍を形成した場合、粘膜直下に膿瘍が形成されているか確かめるために過酸化水素水を含ませた綿球で粘膜を拭いてみます。近接しているとカタラーゼ反応による発泡が認められます。このようにして膿瘍切開の時期や部位の判断にカタラーゼ反応を応用しています。

ヒトをはじめとして肝臓に多く存在するため、肝臓をオキシドールにつけると酸素が発生します。ヒトの場合、このタンパク質をコードしている遺伝子はCATで第11染色体のp13に存在します。また、この遺伝子が欠損すると無カタラーゼ症(acatalasemia)を発症します。

正常人と無カタラーゼ血症の間に生まれた子供は低カタラーゼ血症(hypocatalasemia)といわれます。さらに、低カタラーゼ血症は日本人の500人に約1人の割合で存在していると言われています。

ちなみに、歯科で使用している歯のホワイトニングの漂白剤は、過酸化水素を使用していますので、無カタラーゼ血症ならびに低カタラーゼ血症には注意が必要です。


参考文献

1)今成登志男. “スーパーオキシドディスムターゼ.” ファルマシア 15.1 (1979): 37-40.

2)西岡一. “咀嚼とがん予防 唾液による活性酸素消去の研究から.” 日本咀嚼学会雑誌 1.1 (1991): 25-32.


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