どうして騙されてしまうのか?
Why are you fooled?
騙されるとは?
騙されるとは?
今更ですが、「騙されるとは?」辞書を引いてみると、サ行五段活用の動詞「騙す」の未然形である「騙さ」に、受身・尊敬・自発・可能の助動詞「れる」が付いた形と記述されています。
また、贋物を本物であると思い込むように仕向けられること。本物であると偽って贋物を買わされ、つかまされることと記述されています。
騙すの語源は?
「騙」すという漢字がどうして偏が馬なのか?どうして馬が関係しているのか?不思議ですねぇ?そこで、偏と旁についてちょっと調べてみました。
旁の『扁』は、戸(薄い扉)に冊(薄い木の札)で、『門口にはりつける戸籍票』の意味でした。 転じて、薄い軽い物を表すような意味になりました。ちなみに薄く平なことを扁平と言います。さらに、咽喉にあるアーモンドの種に似た器官を扁桃腺といいますねぇ。正確には、腺ではないので扁桃と言いますが、扁桃とはアーモンドの和名です。
騙という字は、馬にひらりと軽く飛び乗る様を表しており、それで、偏には「馬」が使われ、 薄っぺらで浅はかな軽い言葉で人をだます場合に 使われるようになったようです。
英語では
英語では「trick」「fool」「cheat」「deceive」の単語を使用します。
「trick」は手品のトリックの際に使われます。「より巧妙にだます」「罠をかける」とう意味合いで用います。
「fool」は、名詞では「愚か者」「まぬけ」「ばか者」という意味ですが、動詞には、「ふざける」「騙す」「ごまかす」という意味があります。どちらかというとスラングで使う様です。
「cheat」は、「不正をする」という意味があり、自己の利益や目的を達成するために、不正な手段で相手をあざむくときに使われる英語の表現です。
「deceive」は、「あざむく」という意味合いで用い、真実ではないことを、あたかも真実のように相手に信じ込ませるという意味があります。
それぞれの意味合いで使い分けています。
騙そうとする側がいないと騙されることはない訳です。
次に、騙そうとする側の詭弁について考えてみます。
詭弁とは
詭弁とは、一見正しそうに見えるが実は偽りの議論のことで、論理学で、外見・形式をもっともらしく見せかけた虚偽の論法です。悪い言い方をすると「人をだます論法」です。
英語では詭弁は「sophistry」、詭弁法は 「sophism」、詭弁家は「 sophist」 といいます。
詐欺とか人を騙すときに使われる論法ですので、騙されない様に注意が必要です。
しかし相手は、プロですからなかなか難しいのも実際のところです。
現在の世の中は、詭弁の嵐?
国会答弁においてしばしばTVの国会中継や新聞記事等でお目にかかれるワードです。最近では、「桜を見る会」の安倍元首相の答弁でしょうか?
一国の首相が詭弁を弄しているのは嘆かわしい限りです。
詭弁は、ソクラテスの時代から、ダークサイドでした。現在でも前述したように「詭弁を弄する」という使われ方をします。
嘘をつくことなので当然、良い意味では使われません。
詭弁の例(POICウォーターの特徴)
超純水とローブロム塩のみを電気分解して作られる。薬品を使用していないため、安全性が高く、副作用は極めて少ない。
上記に示したものは、歯科関係者にはおなじみの次亜塩素酸系のPOICウォーターについての特徴の一つを表した文言です。よく取り扱い歯科医院のHPで記述されているものです。
記述の文章の一つ一つのセンテンスには嘘はありません。嘘がないのでほとんどの人は信じ込んでしまいます。ちなみにこの手の詭弁を「チェリー・ピッキング」と言います。
チェリー・ピッキングとは?
英語ではcherry-pickingと綴ります。
意味は字のごとく、「さくらんぼを摘む」ことですが、さくらんぼの熟した果実を熟していないものから選別することであり、転じて「良い所だけを取る」「つまみ食い」の意味で使用されるようになりました。
そこで、詭弁の一つで、都合の良い事例や事実あるいは要因のみを羅列し、都合の悪い論点への言及を避け、誤った結論に誘導する手法を言う様になりました。
POICウォーターについての解説は、「どうして騙されてしまうのか?」を理解した方が分かりやすいので、まず、「どうして騙されてしまうのか?」について解説します。
どうして騙されてしまうのか?
脳の情報処理機構が影響している!
人間の脳における情報処理は、自動的処理が無意識に行われているからと言われています。1)3)
デフォルトは、自動的処理になっています。
以前、当ブログでも触れたことがありますが「RAS」も関係しています。
正しいか間違っているかは別として、なるべく早く情報を処理できる様に人間が生きていくために身につけたものと言われています。2)
ほとんどの人が意識したことはないと思いますが、普段、何気に脳で行われている情報処理は、自動的処理が行われている「システム1」と制御的処理が行われている「システム2」の2つあると言われています。
ざっくり説明すると、
システム1について
システム1は、前もって脳にINPUTされた正しいとされる情報を基に、新たな情報が正しいか間違っているは別として、瞬時に正しいと情報処理を行ってしまいます。要するに、直感的で早い思考です。
「チェリー・ピッキング」は、この情報処理を巧みに利用しています。正しい情報を羅列されると、新たな情報も、疑うことなく正しいと脳が処理してしまいます。
まず、簡単な実験をしてみます。
バットとボールは合わせて1万1000円です。バットはボールより1万円高いです。では、ボールはいくらでしょうか?
上記の設問を直感的に解答してみてください。
システム1(早い思考)が働くので、ボールは1000円と解答してしまう方がほとんどです。
正解は、1000円ではありません。ちなみに、ボールが1000円だと合計が12000円になってしまいます。
後述するシステム2(遅い思考)でじっくり、ゆっくり考えてみてください。
システム2について
システム2(遅い思考)は、じっくり考えて行われる効率の悪い情報処理の方法です。
非常に難解なものや自分がまだ習得したことのないものはこの処理を行います。
例えば、自動車の運転を習う時とか、歯科で言うなら、初めてスケーリングの仕方を習う時や初めてアルジネート印象をとるときなどがこれに当たります。
当然、時間がかかります。なんでも最初のうちは時間がかかるのはこのためです。
また、この情報処理は、システム1に問題があり不都合が生じると、この方法を用いて情報に対する認知を修正します。
さて、先程の設問をもう一度考えてみます。
バットをY、ボールをXとすると、バットとボールを合わせると11000円なので
Y+X=11000 ①
バットはボールより10000円高いので
YーX=10000 ②
②を、Y=10000+Xにして①に代入すると
10000+2X=11000
2X=1000
X=500
ボールは500円という事になります。
上記に提示した実験は、主宰者が日本人にわかりやすいようにモディファイしたものです。本家本元は、11000円が1ドル10セントです。
この実験5)は、アメリカの秀才が集まるハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、プリンストン大学の学生に行われたものです。結果は、衝撃的で50%の学生が直感的な間違った解答をしたとのことです。さらに多くの大学で行ったら、誤解答は80%を越えたのではないかとしていました。
次の設問をしてみてください。
全てのバラは花である。一部の花はすぐに萎れる。従って、一部のバラはすぐに萎れる。
この三段論法も成り立ってしまうと考えてしまいます。
しかし、この三段論法は、成り立ちません。何故なら、すぐに萎れる花にバラが含まれない場合があるからです。
三段論法の演繹法は、前提事項である仮定が正しいという条件下で結果が正しくなければならないということが特徴でしたねぇ(演繹法については「推論の基本」を参照してください)
これもバットとボールと同様に最もらしい答えが頭に浮かんでしまいます。
大抵の人は、結論の表現が正しい思うと、それに至ったと思われる論理も正しいと思い込んでしまいます。
つまり、システム1が関与しているときは、初めに結論ありきで論理はそれに従うことになってしまいます。ほとんどの人が設問を深く考えるという行動はしないのです。
さて、棚置きになっていたPOICウォーターについてですが、
超純水とローブロム塩のみを電気分解して作られる。薬品を使用していないため、安全性が高く、副作用は極めて少ない。
それぞれのセンテンスは全て正しいことが述べられています。
ちょっと考えると
POICウォーターについて、「電気分解で生成されたものの化学式あるいは組成が記載されていないこと」、さらに、「生成されたものが不明にもかかわらず、安全性が高く副作用がないとしていること」など、いくつかおかしなことに気づきます。そしてそれらについて考察するとPOICウォーターが微妙なことにすぐに気づきます。
他の正しいことに目を向けさせておいて、重要な事には目を向けさせないようにしています。
まさに、チェリー・ピッキングですねぇ。
詳しくは、「POICウォーターに対する疑念」を参照してください。
これも同様で、システム1で早い思考で処理をしてしまっているので、ほとんどの人が深く考えることはしません。従って、なんの疑いもせず、POICウォーターは、正しいとしてしまいます。
確証バイアス
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参考文献
3)伊藤義徳, 金築優, and 根建金男. “認知行動療法における自動的処理と統制的処理: 認知臨床心理学からの提案 (1)(展望).” 行動療法研究 27.2 (2001): 97-108.
4)川口潤. “プライミング効果と意識的処理・無意識的処理.” 心理学評論 26.2 (1983): 109-128.
6)中村國則. “項目反応理論を用いた 4 枚カード問題の分析.” 心理学研究 80.5 (2009): 436-441.
7)伊藤君男. “説得におけるヒューリスティック処理とシステマティック処理の加算効果 説得者の信ぴょう性・論拠の質・話題への関与の効果.” 実験社会心理学研究 41.2 (2002): 137-146
8)俊野雅司. “『ファスト & スロー (上・下)』 ダニエル・カーネマン [著], 村井章子 [訳], 早川書房, 2012 年.” (2014).
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