ACE2受容体と口腔内ケア
ACE2 receptor and oral care
ACE2は新型コロナウイルスの主要な宿主細胞受容体であり、ウイルスが細胞に侵入して最終的な感染を引き起こすのに重要な役割を果たすことが報告されています。1)2)
ACE2受容体とは?
ACE2は、Angiotensin converting enzyme 2の略で、日本語にするとアンジオテンシン変換酵素IIです。ACEHとも呼ばれ、ACEファミリーの亜鉛メタロプロテアーゼであり、レニン-アンジオテンシン系の重要な調節因子です。
ざっくり言うと、血圧を調節しているシステムに関係しているものです。
余談ですが、血圧の薬もこのメカニズムを利用した薬がたくさんあります。現在のところは、一応大丈夫という見解です。心配になる方は、かかりつけのお医者さんに相談して薬を変更してもらうことも有りかと思います。
ACE2受容体はどこにあるのか?
ACE2受容体は、肺胞、腸、腎臓、血管の内皮細胞に存在します。また、通常は体が感染症と戦うのを助けるインターフェロンが、ACE2タンパク質を産生するACE2遺伝子を刺激することも報告されています。3)
舌に受容体あり
さらに、新型コロナウイルスが侵入するACE2受容体は口の中の粘膜、特に舌に多く発現していると言う報告もあります。1)2)
新型コロナウイルスに罹患した初期症状として味覚障害が起こるのも納得出来ます。
味覚は、舌の舌乳頭にある味蕾で刺激を受け、大脳に信号を送り味が認識されています。ACE2受容体がある舌が感染する事によって、味蕾に炎症が起こり、味覚障害が起こると考えられます。最近報告された、脳梗塞がみられるという所見も血管の内皮細胞のACE2受容体が関与していると考えることができると思います。
この様に、ACE2受容体がある組織で様々な炎症反応が起こることが容易に想像できます。
体のいろいろな組織で起これば、多臓器不全ということでしょうか?もう少ししたら、病態等詳しいことが分かると思います。
歯周病菌も関与している
さて、新型コロナウイルスは、ACE2受容体に結合してからプロテアーゼ という酵素で活性化されることで細胞内に侵入しようとします。ところがこの酵素は、歯周病菌も産生するのです。
さらに、ACE2受容体は、炎症が起こった際に、細胞を保護する働きがあるので、炎症があると増加します。つまり、歯周病菌によって歯周ポケットに炎症が起こると歯周組織にもACE2受容体が増加することになり、感染のリスクが高まります。
歯周病菌は、ACE2受容体を増加させ感染のリスクを高めてしまうことと歯周病菌が出すプロテアーゼ という酵素によって新型コロナウイルスが体に侵入するためのサポーターになってしまうのです。
このメカニズムは、インフルエンザの場合もほぼ同様です。
このことに関して、東京歯科大学奥田克爾名誉教授が『高齢者の静かなる暗殺者: 口腔内バイオフィルムとの戦い』4)でわかりやすく解説してくれています。(参考文献にリンクがしてありますのでご覧ください)
新型コロナウイルスのパンデミックからオーラルヘルスを考える
今回の新型コロナウイルスに関してウイルスと歯周病菌との関係についての専門家である東京歯科大学奥田克爾名誉教授が『新型コロナウイルスのパンデミックからオーラスヘルスを考える』と題し、コロナウイルスからはじまり、治療薬・ワクチン等についてわかりやすく簡潔にまとめられていますのでご覧ください。
一般の方はもとより、歯科医療従事者や医療従事者にも大変参考になると思います。(容量が大きいため表示およびダウンロードに時間がかかります)
(ダウンロードはこちら)
ウイルスに感染しにくくする方法
まず考えられるのはすでに皆さんが行っている「手洗いをする」「マスクをする」ですが・・・
ウイルスが体に侵入するメカニズムを考えると
「口腔内ケア」が非常に重要になってきます。
理由について、すでに説明した通りです。
残念ながら、ほとんどの人は、自分の口腔内の状態が感染に関係しているとは思っていません。
口腔内ケアの重要性について再認識して、「マスク」」「手洗い」に「口腔内ケア」をプラスしていただきたいと思います。
まとめ
新型コロナウイルスが流行っているいまだからこそ、オーラルケアの重要性について見直す必要あり
口の中は、「バクテリアリザーバー」と呼ばれるほど細菌の繁殖場です。細菌の繁殖場所を破壊する作業が必要です。これら等をするために定期的に歯医者さんに通院して、メンテナンスを行っています
世界のトップリーダーは、異常がなくても3ヶ月に一度は歯科医院でメンテナンスを受けています。これは、口腔内ケアの重要性を認知しているからです。
このことは、医学の父ヒポクラテスも今から2500年以上前に言及しています。
感染症の予防は、口腔内ケアも非常に大切になります。
口腔内ケアの方法は、下記の関連記事の「インフルエンザ予防の歯磨き」にアップしてありますのでご参考にしてください。
患者さんごとに方法が異なりますので、かかりつけの歯科医院にご相談してください。
予防は治療に勝る
エラスムス
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参考文献
4)奥田克爾. “高齢者の静かなる暗殺者: 口腔内バイオフィルムとの戦い.” 老年歯科医学 24.2 (2009): 85-90.