PCR検査について

About PCR test

PCR検査のことを知らない人がいないほど今やPCRはメジャーなワードになってしまいました。2ヶ月ほど前まではごく一部の人のみしか知らないワードでしたが今や世界中の人が知っているワードになってしまいました。

さらに、

PCR検査の拡充を目的に、厚生労働省が通知で各地の自治体に設置を促した「地域外来・検査センター」について、47都道府県のうち12府県が設置を決めたとの報道もあり、さらに、歯科医もPCR検査の検体採取が行えるような報道がなされ、PCR検査マストの感が強くなってきました。

そこで、今更の感はありますがPCR検査について調べてみました。

PCR検査とは?

PCRは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、ざっくり言うとウイルスの遺伝子を増幅して検出する方法です。1)

遺伝子研究になくてはならない技術で、この方法を発見したKary Mullis博士は、1993年にノーベル化学賞を受賞しました。

PCRの原理

出典:大阪大学微生物病研究所HP

まず一本のDNAをもとに、DNAを複製します。さらに、複製された2本のDNAをそれぞれ複製します。これを繰り返すことで、2本が4本、4本が8本、、、と倍々にDNAが増幅されます。患者さんの検体に含まれるウイルスの遺伝子量では検出できませんが、このPCR法で増幅することにより検出できるようになります。PCR法には、ウイルスの遺伝子配列情報をもとに人工的に合成した短いDNA断片(プライマー)が必要です。今回は中国の研究グループが発表した新型コロナウイルスの遺伝子配列をもとにこのDNA断片を合成しています。

大阪大学微生物研究所HPより

RT-PCR法

1987年、Powell等のグループがPCRの原理ををRNA増幅に拡大する技術を発表しました。RT-PCRと呼ばれるこの技術は、逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いてわずかなRNAをcDNAに変換した後、耐熱性DNAポリメラーゼがそのcDNAを検出可能な濃度まで増幅します。この技術により、わずかなmRNA転写産物や他の少量のRNAを検出および解析することが可能になりました。

今回の新型コロナウイルスは、この方法を用いています。理由は、新型コロナウイルスはRNAウイルスなので、PCR法の前にRNAをDNAに変える「逆転写」という作業を行わないとできないからです。

さらに、PCR法でウイルスの遺伝子を増やす際、DNAを増やしながら「蛍光試薬」という光る試薬を取り込ませます。遺伝子が増えれば光が強くなるので、この光の強さでウイルスの遺伝子を検出する「リアルタイムPCR法」を行なっています。

正確には、PCR検査でなく「リアルタイムRT-PCR検査」と言うべきですが、面倒なのでPCR検査といっているようです。

PCR-LAMP法

従来のPCR検査では、DNAの二重らせんを90度という熱の力でほどいて1本の鎖にして行なっていたのに対して、LAMP法は、4種類のプライマーと鎖置換合成酵素を使うことで、DNA(ターゲットDNA)の両端にループ構造を作らせ、目的とする塩基配列の部分だけを大量に増幅させる方法です。2)

増幅したいターゲットDNAの両側に元の塩基配列と対になるプライマーを置くと、そこから合成が始まります。その端がループ状になるようにプライマーは設計されているため、合成されたDNAは両端がループ状になり、そこを起点として再び合成が始まる。その繰り返しが短時間で行われ、膨大な量の合成ができるので、従来の方法に比べ短時間でしかも高精度と言われています。2)3)

新型コロナウイルス専用キット

出典:島津製作所HP

4月20日に島津製作所から新型コロナウイルス検出専用キットが発売されました。

出典:島津製作所HP

試料からRNA・精製は不要で、このキットだけで検出が可能で約70分で可能のようです。

本製品は研究用です。医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品あるいは医療機器として承認・認証等を受けておりません。治療診断目的およびその手続き上での使用はできません。

との但し書きがありました。

PCRは正確なのか?

出典:Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases

新型コロナウイルスに既に感染していると考えられるのに、早い段階では、60~70%くらいしかPCR検査が陽性にならないとの報告もあります。4)5)

文献を見る限りでは、PCR検査よりCTの方が感度が高いようです。文献では上記のCT画像のようにスリガラス状の像になってもPCR検査は陰性に出たとしています。4)

これらのことから、PCR検査を過信することは危ないと思われます。

所詮PCRされどPCRといったところでしょうか?

やはり、総合的な検査が必要のようです。実際の医療現場ではもちろん行われているので心配は必要ありません。

マスコミは悪いニュースで不安を煽るのが得意なので、若干安心できる情報を探してみました。

死亡率は世界で一番低い

出典:日本経済新聞より

日本の医療水準は実は世界一と言われています。その証拠に、今回の新型コロナウイルスにおける死亡率は、上記の図の様に世界で一番低いのです。これは、医療水準が高いことと医療従事者が頑張っているからです。

累積患者さんの増加ペースが世界一遅い

出典:日本経済新聞より

図を見ると日本のみ諸外国と比べ増加のペースが明らかに違います。これは何を意味するのでしょうか?

もしかしたら、日本人は、すでに新型コロナウイルスの抗体を持っているのかもしれないと言うことも考えられます。

他には、すごく綺麗好きとか、マスク文化があるから、靴を脱ぐ習慣があるからなどいろいろ考えられますが、患者さんの増加ペースが日本だけ違うことは紛れも無い事実です。

まとめ

PCR検査の過信は禁物

日本は死亡率が世界で一番低い

患者さんの増加ペースが日本だけ特殊

新型コロナウイルスの感染の矢面に立って従事している医療従事者ならびに他業種で同様に感染のリスクを顧みず従事している人々に感謝を申し上げます。


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参考文献

1)Saiki, Randall K., et al. “Enzymatic amplification of beta-globin genomic sequences and restriction site analysis for diagnosis of sickle cell anemia.” Science 230.4732 (1985): 1350-1354.

2)牛久保宏. “LAMP 法の原理.” ウイルス 54.1 (2004): 107-112.

3)池戸正成. “LAMP 法の原理と今後の技術開発の動向.” 日本水産学会誌 73.2 (2007): 296-298.

4)Ai, Tao, et al. “Correlation of chest CT and RT-PCR testing in coronavirus disease 2019 (COVID-19) in China: a report of 1014 cases.” Radiology (2020): 200642.

5)Fang, Yicheng, et al. “Sensitivity of chest CT for COVID-19: comparison to RT-PCR.” Radiology (2020): 200432.

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