HLA-A24がファクターXかもしれない?

Maybe HLA-A24 is Factor X?

日本人は、欧米諸国の人に比べて新型コロナの感染数がなぜか一桁少ないです。その因子であるファクターXとは何なのか?未だに解明されていません。

そんな中、あのSTAF細胞で有名な理化学研究所から、ファクターXの因子の可能性を示唆する興味ある論文が12月2日にNATUREに投稿されました。論文名は

「Identification of TCR repertoires in functionally competent cytotoxic T cells cross-reactive to SARS-CoV-2」

日本語にすると「SARS-CoV-2と交差反応する機能的に有能な細胞傷害性T細胞におけるTCRレパートリーの同定」となります。これに関して、理研から12月8日に「新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞」と題してプレスリリースされました。

内容は、ザックリ言うとHLA(ヒト白血球型抗原)と呼ばれる細胞の表面にある物質の種類が関係しているのではないかという研究結果の発表でした。

抗体がウイルスの体内侵入を防御するので、ワクチンを打ちますが、ウイルスが体内に侵入した場合は、免疫細胞のキラーT細胞が活躍します。キラーT細胞は、感染細胞上でHLA(ヒト白血球型抗原)に提示された抗原の一部を認識し、感染細胞を全て破壊することで、重篤化を防いでいると言われています。

この抗原の一部は「エピトープ(抗原決定基)」と呼ばれるウイルスの特定の構造単位で、数個のアミノ酸などからなる配列(ペプチド)です。従って、重篤なCOVID-19を防ぐにはエピトープを見つけることが重要と考えられます。

文献によると、エピトープであるQYIペプチドの同定に成功し、さらに、同定したQYIペプチドがHLA-A*24:02を持つ健常人の末梢血から80%以上という高い確率でキラーT細胞を誘導できること、また誘導されたキラーT細胞がサイトカインを産生したり、細胞傷害活性を示したりすることが判明しました。

風邪の原因ウイルスである「従来のコロナウイルス」と「新型コロナウイルス」のエピトープを調べたところ、「極めてよく似たエピトープ」があることがわかりました。さらに、そのエピトープは日本人の6割近くが持つといわれるHLA-A24型によく結合することもわかりました。ちなみに、欧米人は1割から2割が持っている様です。

詳しくは、プレスリリースの解説がYouTubeにアップされていますので興味がある方はご覧ください。

プレスリリース解説


参考文献

1)Shimizu, Kanako, et al. “Identification of TCR repertoires in functionally competent cytotoxic T cells cross-reactive to SARS-CoV-2.” (2021).


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