方法
カゼインを摂取すると食物アレルギーを発症するマウスにカゼイン含有飼料を与え、摂取2週間、4週間に血漿抗カゼインIgE抗体価を調べました。マウスを2つのグループに分け、一方にはカゼイン摂取開始の1週間前から試験終了まで、20mg/ⅠのHK L-137を添加した飲水を与えました。
Lacdent-proはさまざまな効果を有していることを投稿しましたが、アレルギーに関しても効果があります。アレルギーについてはある程度、前提知識が必要です。簡単にご説明します。
アレルギーとはある意味では、免疫反応の一つです。体内に侵入した異物に対する防御反応です。万人にとって有害な異物に反応して体内から排除するのが免疫であり、我々の体を守るためにはなくてはならない大切で必要なシステムです。一方、特定の人の体で、本来無害であるはずの異物(アレルゲン)に対して免疫反応が起こってしまうのがアレルギーです。
型 | 名称 | 反応 | 疾患 |
Ⅰ型 |
即時型 アナフィラキシー型 IgE保存型 |
アレルゲンの侵入により多量に作り出されたIgE抗体が再びアレルゲンが侵入することで起こる |
アトピー性皮膚炎 蕁麻疹 アナフィラキシーショック 食物アレルギー 花粉症 |
Ⅱ型 |
細胞障害型 細胞融解型 |
抗原に対して作られた抗体が赤血球、白血球、血小板などが破壊、IgE、IgN、補体活性化 |
自己免疫性溶解性貧血 血小板減少症 重症筋無力症 薬剤アレルギー |
Ⅲ型 |
免疫複合症 アルサス症 |
抗原と抗体による(免疫複合体)が血液を循環し、腎臓・肺など特定の小血管に付着して炎症を起こす |
糸球体腎炎 慢性関節リウマチ 全身性エリテマトーデス 薬剤アレルギー |
Ⅳ型 |
遅延型 細胞免疫型 ツベルクリン型 |
抗体がTリンパ球に作用しリンフォカインが放出されて炎症が起こる |
アトピー性皮膚炎 アレルギー性接触皮膚炎 ウイルス疾患 |
表Ⅰ リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト抜粋改変
アレルギーは、上記の表1に示したように、Ⅰ型からⅣ型がありますが、一般に「アレルギー」と言われる疾患はⅠ型のことをいい、また、狭い意味で「アレルギー」と言う場合は、Ⅰ型アレルギー反応を示しています。
アレルギーのメカニズムは図1の様になります。
アレルゲンが侵入したときに、まずは、抗原提示細胞に取り込まれます。抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージやランゲルハンス細胞で、主にヘルパーT 細胞に抗原を提示します。T 細胞は、B 細胞に抗体を形成するように指令することになります。B 細胞が形質細胞に分化して、主に IgE を産生すれば、Ⅰ型アレルギー反応で、IgG,IgM を産生すれば、Ⅱ型、Ⅲ型アレルギー反応です。ヘルパー T 細胞が細胞障害型 T 細胞に指令すれば、Ⅳ型アレルギー反応になります。一般的なアレルギーの場合は、IgEが産生されるⅠ型アレルギー反応になります。
Th1型免疫は、Th0細胞が、サイトカインと呼ばれる免疫におけるホルモンの様な働きをするタンパク質のインターロイキン12によって、Th1細胞に分化し、このTh1細胞がINF-γなどを産生して、キラー細胞、NK細胞、マクロファージを活性し、これらの活性化した細胞が中心となって働きます。
細胞が中心となっているので細胞性免疫とも呼ばれています。
これらの細胞が、ウイルス、癌細胞あるいは菌などを攻撃してくれています。
つまり、風邪、インフルエンザ、悪性腫瘍になりにくくなるということです。
Th2型免疫は、Th0細胞がインターロイキン4などによって、Th2細胞に分化し、B細胞を活性化しB細胞からの抗体産生を助けてくれます。
抗体は、血液中に溶けているので、病原菌などと強く結合して排除してくれます。血液中の抗体が中心となりますので液性免疫とも呼ばれています。ワクチンはこれに当たります。
抗原が侵入してきた際の免疫系のTh0細胞の反応の仕方で身体の状態が左右されるのです。次に分化したT細胞による病態について考えてみます。
自己免疫疾患、アレルギー疾患の患者さんのリンパ球では、多くの場合、「ヘルパーT細胞」に何らかの異常がおきています。(図3)
ヘルパーT細胞は、そのもととなる細胞(前駆細胞)が骨髄で誕生した後、心臓の上にある胸腺に移動して、「ナイーブT細胞(Th0細胞)」という役割の決まらない状態のT細胞として生まれます。胸腺を出たナイーブT細胞は身体の隅々の末梢のリンパ組織を循環しており、抗原の刺激を受けると、抗原の種類や環境に応じて役割の決まったエフェクターT細胞(Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、制御性T細胞)へと分化します。身体中をまわっているナイーブT細胞が、いつ、どこで、どのタイプのエフェクターT細胞に分化するかは、とても重要です。たとえば、Th1細胞がつくられすぎると、自己組織への攻撃が過剰になり関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患が起こります。また、Th2細胞がつくられすぎると、外部からの異物に対する攻撃が過剰になりアレルギー疾患が起こりやすくなることが分かっています。花粉症はこれに当たります。
自己に対する免疫反応 | 非自己に対する免疫反応 | |
強い | 自己免疫疾患 | アレルギー疾患 |
弱い | 癌 | 感染症 |
表2
免疫応答のバランスでどの様な疾患(表2)になるかがある程度決定されるので、免疫応答、特にT細胞のバランスをいい状態に保つことは非常に重要だと考えられます。
先進国でアレルギー性疾患が増加した理由としてStrachanが提唱した「乳児期までの不衛生な環境がアレルギーの発症を低下させる」という理論。衛生的な環境ではTh1細胞の成熟が起こらずTh2細胞が優位になるため、アレルギー疾患が起きやすいと考える説
スギ花粉についてこの衛生仮説を当てはめて考えてみると、スギ花粉症は、必ずしも衛生的環境で育ったわけでない中高年者にも多く発症し衛生仮説に矛盾するようですが、私の年代の方が幼少期を過ごしたころは、まだ花粉の飛散が少なかったため、現在とは違い不衛生因子は存在しましたが、アレルゲンとの接触が少なくTh0はTh1にもTh2にも分化しなかったと考えられます。(図2)しかし近年スギ花粉の飛散量が急増したため、衛生的となった現在の環境の中で初めて大量のスギ花粉に暴露したために、Th0がTh2に分化しスギ花粉に対する特異的IgE抗体を産生したために生じたと考えられます。
ちなみに、生まれたばかりの赤ちゃんはTh2優位で、アレルギーになりやすい状態です。その後、乳幼児期にさまざまな細菌やウイルス感染にさらされることにより、Th1細胞が刺激され、Th2優位の状態が解消され、 Th1免疫系とTh2免疫系のバランスがとれていきます。大きくなるとアレルギーが自然と治るのはこのためです。家畜のいる農家の子どもは、頻繁に細菌にさらされています。兄弟姉妹の多い家庭では、保育所や学校などから感染症が持ち込まれます。
このような環境下で育った子どもは、Th1/Th2バランスのとれた状態で免疫系が成熟するため、アレルギー疾患になりにくくなると言われています。
昨今、衛生的な環境が望ましいとされています。しかし、あまりにも「きれいすぎる」環境を追及したために、アレルギー疾患が増加したのかもしれません。
Ⅰ型アレルギーは、Th2型免疫応答が過剰に働いて、アレルゲンに対するIgE抗体が作られることで発症します。一方で、Th1型免疫は過剰なTh2免疫応答を抑制することが分かっています。(図2)(図3)
図4は、アレルギーモデルマウスにHKL-137を与えて、IgE抗体産生に対する影響をみたものです。
免疫応答のバランスは非常に大切
HK L-137には、アレルギー症状を抑える効果が期待される
免疫とは?免疫とは、体内で発生したガン細胞や外から侵入した細菌やウイルスなどを常に監視し撃 ...