ブースターショットするのか?
Do you need a booster vaccination?
新型コロナウイルスの影響で、異例の一年延期や無観客での開催など何から何まで異例づくめの東京オリンピックも、開催してみれば、日本勢は、金27個、銀14個、銅17個の史上最多58個のメダルを獲得して大会を盛り上げました。選手の方には感動を「ありがとう」と感謝したいですねぇ!
国立競技場で聖火が静かに消えると、ビジョンに「ARIGATO」の文字が映し出され、世界中への感謝を表現して閉幕しました。
閉会式ハイライトこちら
オリンピックの熱気に感化されたわけではありませんが、新型コロナウイルスもデルタ株によって感染者が爆増し始めています。
デルタ株による世界中での感染者爆増により、2回目の接種が終わらないうちに、デルタ株の対策としてのブースターショットの話題が上がっています。日本でも先日、加藤幹事長は、情報を収集しながら検討を進めたいとしていました。
正直なところ、2回目の接種後、熱発があり意外と辛かったので、3回目の接種に関しては結構気が思いところです。
とは言っても、もし接種の場合は、接種はすることになりますが・・・
ところで、「ブースター」というワードですが、ロケットエンジンとかでも使用され、追加と考えれば良いと思います。英語では、「booster」と綴ります。
ブースターショットを実施するのは、変異株の出現により、抗体値が低下してくるとワクチンの効果が低下してしまうのをワクチンを打つことによってまた抗体値を上げる作戦です。
2回目の接種はブースターショットとして行なっています。
ところで、イスラエルはすでにほとんどの人が2回の接種が完了している国ですが、イスラエル保健当局がデルタ株が流行してファイザー・ビオンテックのワクチンの予防効果が94%から64%に低下したとの分析結果を発表しました。
これは、ワクチンの効果が6ヶ月を過ぎると低下してくることとデルタ株がイスラエルで優勢種になった時期と重なったこともあり、完全な予防接種後、6~12カ月以内に3回目の接種(ブースターショット)が必要なこともあるのではないだろうかとしています。
実際、イスラエルでは3回目の接種が8月から高齢者や基礎疾患がある人を対象に始まりました。イギリスも秋ぐらいにする様です。
しかしながら、WHOは、新型コロナウイルスワクチンが世界各国に十分に行き渡っていない状況で、富裕国はワクチンブースターショットを発注すべきでないとの認識を示しました。
そこで、今日は、「ウイルスの変異株」や「変異株に対するワクチンの効果」等について探究してみました。
変異株の種類
WHOなどの公的な文書では、科学者の間で使われる「B.1.1.7」などの呼称が使われています。ちなみに、「B.1.1.7」は、英国で検出された変異株です。
当初は、報道などでは、最初に変異株が見つかった国や地域の名前で呼んでいましたが、これだと偏見や差別等が生じるため、WHOは、5月31日に4種ある「懸念される変異株(VOC)」について、新たにギリシャ文字を使った呼び名をつけました。
詳しくはこちら
英国、南アフリカ、ブラジル、インドの各地で検出された変異株が、それぞれ「アルファ」「ベータ」「ガンマ」「デルタ」となりました。
現在は、デルタ株が感染力も強く、またワクチンの効果も少なく世界中に拡大しています。
日本での感染急拡大も、デルタ株によるものです。
ワクチンの効果は?
私たちは、どうしてワクチンを接種するのでしょうか?それは、ワクチンを接種することによってワクチンの効果を享受したいからです。
ワクチンを接種することによる効果は、表1に示すように「感染予防効果」「発症予防効果」「重症化予防効果」の3つあるといわれています。
インフルエンザのワクチンは、3つの効果の内「重症化予防効果」を期待して接種していました。
新型コロナのワクチンもインフルエンザワクチンと同様に「重症化予防効果」を期待していましたが、ワクチンの効果が優れていたため、「感染予防効果」と「発症予防効果」があるかの如く報道されていました。
ところで、現在主流のデルタ株についてはどうでしょうか?
ワクチンの有効性は?
世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つであるNEJMに7月21日に記載された「新型コロナのデルタ株に対するワクチンの有効性」によると、ファイザー社製のワクチン(以下、ファイザーと略します)とアストラゼネカ社製のワクチン(以下、アストラゼネカと略します)による1回投与後の有効性は、アルファ変異体(48.7%; 95%CI、45.5〜51.7); 結果は両方のワクチンで類似していました。ファイザーでは、2回接種の有効性はアルファ変異型の人では93.7%(95%CI、91.6〜95.3)、デルタ変異型の人では88.0%(95%CI、85.3〜90.1)でした。アストラゼネカでは、2回の接種の有効性はアルファバリアントの人では74.5%(95%CI、68.4〜79.4)、デルタバリアントの人では67.0%(95%CI、61.3〜71.8)でした。1)
ところが、それから1週間ほどしたら、CDCから驚くことが公表されました。
CDC(米疾病対策センター)は、7月30日に、東部マサチューセッツ州で7月に起きた新型コロナウイルスの集団感染を分析したところ、7割超がワクチンを接種し終えた人だったと明らかにし、ほとんどが感染力の強い「デルタ株」であったことを公表しました。
詳細は、同州バーンスタブルで、7月にイベントや集会などを通じて469人が感染しました。このうち346人(74%)はワクチン接種を終えていました。さらに、未接種者と同じ量のウイルスが確認されたため、デルタ株は感染力が強いと指摘していました。
しかしながら、感染した接種者のうち約8割に当たる274人は発熱などの症状があったが、入院したのは基礎疾患がある2人を含む4人(1.2%)にとどまり、死者はなく、「重症化や死亡を防ぐにはワクチン接種が最も重要な戦略になる」としていました。2)
要するに、デルタ株に限定して考えると、インフルエンザのワクチンと同様に、ワクチンを接種すればワクチンの効果のうち重症化予防効果が得られると考えられます。
ワクチン接種者が感染を拡大してしまうかも?
問題は、ワクチンを接種してもワクチン未接種者と同量のウイルスを保有しているので、このワクチンの抗原性がワクチンによってカプセライズされていないとしたら、ワクチン接種者がマスクをしないことにより感染を広げてしまうことになってしまいます。
そこで、CDCは、ワクチン接種者はマスクをする必要性がないとしていましたが、ワクチンを接種してもマスクが必要と方針を変更しました。
ワクチンを接種すれば、感染しても重症化しないための予防になるということで、感染しないというわけではありません。従来のインフルエンザのワクチンと同様です。ワクチンを接種すれば感染しないということではありません。
事実、ブレークスルーが日本でも始まっている様です。発表されたのは氷山の一角かもしれません。
鹿児島市医師会と同市の米盛病院は5日、7月25日に確認された同院の新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)について、感染確認された21人全員がインド由来のデルタ株感染だったと明らかにした。うち3人は、ワクチン2回接種後に一定期間経過して感染が確認される「ブレークスルー感染」だった。
南日本新聞
ブースターショットの必要性は?
そもそも、すでに、1回での接種では抗体が十分にできないので、2回目の追加接種いわゆるブースターショットをしているので、抗体値を上げるという観点から考えると3回目のブースターショットに関しては何ら問題はない様に思われます。
抗体値は、接種から月日が経つと低下してくことは自明なことなので、抗体値を上昇させるにはブースターショットをすることは必要であると思われます。
ちなみに、ファイザー社とビオンテック社は3回目の接種の臨床試験を行なっていると7月8日に発表しました。
抗体値すなわち中和抗体がベータ株に対して5倍から10倍になる様です。デルタ株に対してでないところが残念ですが
詳細はこちら
デルタ株に関しては、7月30日のCDCの発表でも明らかな様に、2回目のブースターショットを行なっても「感染予防効果」「発症予防効果」はあまり得られていません。
したがって、3回目のブースターショットを行なった臨床試験の結果を見ての判断になると思います。
現時点では、ワクチン接種による効果は、「感染予防効果」と「発症予防効果」はあまりなく「重症化予防効果」があるということです。
まとめ
現時点では、新型コロナウイルスは、
変異株のデルタ株が主体になりつつある。
ワクチンの効果は、
従来株では「感染予防効果」「発症予防効果」「重症化予防効果」が得られたが、デルタ株では、現在では「重症化予防効果」が際立っています。
ブースターショットに関しては、
接種が必要になるかもしれない
ワクチンの効果については、ブレークスルー感染も認められ、感染予防効果にはクエスチョンマークがありますが、文献や情報等からワクチンを接種しておいた方が重症化することは少なそうです。
参考文献
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