人工甘味料について

Artificial sweetener

健康志向・ダイエット志向が広がりを見せ、世の中には低カロリー、カロリーゼロ、シュガーレスなどを謳った商品があふれています。

実は、これらの商品は、「人工甘味料」を使用しています。

人工甘味料は英語では、「Artificial sweetener」です。

主にダイエット清涼飲料水や減糖タイプのコーヒー、ガムや菓子類、さらに、ドレッシング等に使用されています。ちなみに歯磨き粉にも使用されています。

ある意味ほとんど毎日、知らず知らずの内に、口にしている可能性が高いと考えられます。

一見すると、健康志向な商品なので問題なさそうですが、実は差にあらず、ちょっと問題がありそうです。そこで、人工甘味料について深掘りしてみました。

甘味料とは?

表1:甘味料について

甘味料とは、食品に甘味をつける調味料のことで、日本の食品衛生法による食品の表示にあっては食品添加物に区分されています。

英語では、「Sweetener」と綴ります。

甘味料は、「糖質系甘味料」「非糖質系甘味料」のふたつに分けられます。

「糖質系甘味料」「砂糖」「でんぷん由来の糖」「その他の糖」「糖アルコール」の4つ

「非糖質系甘味料」「天然甘味料」と「合成甘味料」の2つに分けられます。

人工甘味料について

表2:人工甘味料

合成甘味料は、本来は合成して作られた成分だけを指す言葉ですが、最近では人工甘味料と合成甘味料は同様に扱われている場合を散見します。 人工甘味料の中には、自然の甘味料を手に加えて作っているものもありますが、合成甘味料は食品にはない甘味成分を人工的に化学反応によって作り出したものをいいます

一般的に、人工甘味料は、表2に示すように、「合成甘味料」「糖アルコール」のことを指していいます。

合成甘味料の種類

表3:合成甘味料

現在日本で使用許可が出ている合成甘味料は、「サッカリン」「アスパルテーム」「アセスルファムK(カリウム)」「スクラロース」「ネオテーム」「アドバンテーム」の6種類になります。

合成甘味料は、何種類かを混ぜることによって甘味を調整しています。

ちなみに、英語では「Synthetic sweetener」と綴ります。

サッカリン

砂糖の400倍の甘さともいわています。サッカリン自体は水に溶けにくいので水溶性のサッカリン酸ナトリウムとしてさまざまな加工食品に使用しています。1960年代に発がん性あると考えられ使用禁止になりましたが、その後、様々な動物実験を経た結果、発がん性は示されず、現在では発がん性物質リストから削除されています。

発がん性があるということから日本ではあまり扱われなくなりましたが、九州地方の甘い醤油に使用されています。また、歯磨き粉にも使用されています。

アスパルテーム

アスパラギン酸とフェニルアラニンが結合してできたもので、甘さは砂糖の約200倍です。

アスパルテームは 4kcal/g と砂糖と同等のカロリーがありますが、砂糖の約200倍もの甘味を持つため、食品への添加量も砂糖の 1/200 で0.02kcal/g ほどしかありません。

味の素が特許を持っています。フアミリーレストランあるいはスーパーに行くと「パルスイート」として目にすることができます。

さらに、フェニルケトン尿症の人はフェニルアラニンを分解できないためその摂取量を制限する必要があり、表示上は「L-フェニルアラニン化合物」を含む旨を併記するよう定められています。

アセスルファムK

アセスルファムK(カリウム)は、酢酸を原料とする高甘味度甘味料で、砂糖の約250倍の甘さがあります。水に溶けやすく、熱や酸に対する安定性も高いといわれています。アスパルテームなど他の甘味料と組み合わせて甘味の質を砂糖に近づけるため使用しています。

スクラロース

スクラロースは砂糖の約750倍の甘味があります。高甘味度の甘味料として知られるサッカリンステビアは官能試験で苦味や渋味が指摘されますが、スクラロースにはそれがほとんどありません。またスクラロースは後甘味で後引きがあり、ショ糖に似たまろやかな甘味とされています。さらに、他の糖類や高甘味度の甘味料と併用すると甘味度、甘味質とも増強する傾向があり、他の甘味料との併用で清涼飲料水、スポーツドリンク、アイスクリームなどに使用されています。

ネオテーム

ネオテームはアスパルテームを還元的N-アルキル化することによって合成されます。砂糖の約10,000倍の甘味を持つ甘味料です。

アドバンテーム

現在、認可されている人工甘味料の中で一番甘い甘味料です。なんと砂糖の約20,000倍です。味の素によって開発されました。

糖アルコールについて

図1:糖アルコール

糖アルコールとは、一般的に、糖質が持つカルボニル基に水素を添加した還元反応で人工的に作られた糖質の総称です。簡単にいえば、糖アルコールとは、糖に水素を添加したものです。

したがって、糖アルコールは、人工的に作られたものなので、人工甘味料になります。

ちなみに、英語では、「Sugar alcohol」 と綴ります。

さて、アルコールですが、化学では、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基(OH)で置き換えた物質の総称です。ただし、ベンゼン環の水素原子を置換したものは、フェノール類と呼びアルコールとは区別しています。

歴史的に最初に「アルコール」と認識された物質は、お酒に含まれるエタノールだったため、お酒もしくはエタノールを指してアルコールと呼んでいます。

したがって、糖アルコールと呼称してもエタノールが含まれていませんので酔っ払うことはありません😀

アルコール関連での余談で、もう一つ、アルコールによる二日酔いは、アセトアルデヒドによるものです。

体内に入ったアルコールは、酵素によって分解されます。アルコールは肝臓で、ADH(アルコール脱水素酵素)によってアセトアルデヒドに分解されます。次にALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素2)によって酢酸に分解され、酢酸は全身に送られ、筋肉や脂肪組織で二酸化炭素と水に分解され、呼気や尿となって体外へ排出されます。

お酒の量が多いとアセトアルデヒドが分解しきれずアセトアルデヒドの毒性で二日酔いが起きてしまいます。

さらに、日本人のALDH2は、低活性の人が40%ぐらいで、さらに不活性の人が4%ぐらいいるようです。日本人が西洋人に比べてお酒が弱いのはALDH2の低活性の人が多いからです。

詳しく知りたい方はこちら

話を戻して、

糖アルコールの種類としては、単糖を還元した「ソルビトール」や「キシリトール」、二糖を還元した「マルチトール」、水飴を還元した「還元水飴」などがあります。

歯科関係ではなんといっても「キシリトール」ですねぇ。

キシリトールは、糖アルコールなのですが、糖アルコールとしてでなく「むし歯予防のガム」として国民に認知されています。

国民に認知されている「キシリトール」ですが、キシリトールと発音するのは日本だけです。キシリトールは「Xylitol」と綴り、発音記号はˈzīlətôlなのでカタカナで表記すると「ザイリトール」となります。したがって英語圏ではキシリトールの発音では通じません😀

キシリトールは口腔内のミュータンス菌による酸の産生がほとんどなく、またミュータンス菌の一部の代謝を阻害する効果があることから「非う蝕性甘味料」として有名です。

ちなみに、キシリトールやソルビトールのような糖アルコールは、小腸で消化、吸収がされにくいので、吸収されなかった糖アルコールが大腸に到達すると大腸の浸透圧が高くなるので、浸透圧を下げるために、水分が集まることでお腹が緩くなる人がいます。

さて、どのぐらいでなるかと言うと、キシリトールの摂取量の1日の限度は、20ℊ~30ℊなので、これ以上摂取するとお腹が緩くなる場合があります。

キシリトール100%のガムなら15個ぐらい摂取しないとなりませんのでまず心配は入りませんが、わずかな量でもお腹が緩くなる方もいますので注意が必要です。

人工甘味料のゼロに騙されているかもしれない?

人工甘味料は、ローカロリーあるいはカロリーゼロでダイエットが出来てしまう魔法のようなものに思えますが、だいたい魔法と称するものは怪しげなものが多く、むしろ色々な問題があるかもしれないという可能性があります。

コホート研究で有名なフラミンガム研究によると1)・・・

人工甘味料を含む飲料を「毎日1杯以上飲む人」は、「全く飲まない人」と比べ、脳梗塞のリスクが2.96倍に、認知症になるリスクが2.89倍になりました。その一方で、砂糖入りの飲料では、このような関係は見られませんでした。

結果だけをみると、人工甘味料を含み飲料を毎日1杯以上摂取すると脳梗塞や認知症になるリスクが約3倍あることになります。

人工甘味料は小腸で吸収されずに大腸まで移動します。

人工甘味料として利用されているアスパルテーム、サッカリン、スクラロースが、腸内細菌の変化を介して血糖値の異常を引き起こすことが示唆されてしまいました。2)

カロリーゼロでも「身体への影響はゼロではない」むしろ有るようです。

人工甘味料と疾患

ほとんどの人工甘味料は、「血糖値の上昇もなく」、「カロリーオフ」にもかかわらず、摂取していると肥満糖尿病脳梗塞認知症になってしまうリスクが高くなってしまうことがわかってきました。3)

当初は、低カロリーのため安心してしまい、逆に過剰に摂取してしまう、心理的な要因が原因として考えられてきましたが、最近では人工甘味料の生理的反応が本来の糖質の反応が起こらないため本来のエネルギー代謝が起こらず脳からの指令で摂食行動が促進され食べ過ぎてしまうのでないかといわれています。

このように、人工甘味料による異常の発症の機序はいろいろ考えられていますが、まだ不明なことは多いようです。

人工甘味料とむし歯

結論から、人工甘味料でむし歯になることはありません。人工甘味料を使ったチョコレートなどが販売されているぐらいです。

だからと言って、人工甘味料のお菓子等を食べるていると、肥満、糖尿病、脳梗塞、認知症になってしまう可能性があるので注意が必要です。

むし歯にならない人工甘味料についてはこちら

まとめ

甘味料は、「糖質系甘味料」と「非糖質系甘味料」

人工甘味料は、「合成甘味料」「糖アルコール」

人工甘味料は、「肥満」「糖尿病」「脳梗塞」「認知症」のリスクあり

人工甘味料は、むし歯にならない

コンビニやスーパーで販売しているドリンクだけにフォーカスしてみても、甘くないドリンクはなんと「ミネラルウォーター」「麦茶」「お茶」ぐらいしかありません。その他は、甘味料が含まれているドリンクといっても過言ではありません。ちなみにこれらの甘味料はほとんどが人工甘味料です。

さらに、アルコールの陳列棚を見てみると「カロリーゼロ」「糖質ゼロ」のワードの商品を散見することができます。

飽食の時代ですが、健康ブームもあり、テレビでこの食品は身体にいいと放送されるとすぐに売り切れになってしまいます。飽食の時代ゆえに、ローカロリーやゼロカロリーの物を求めるのかもしれません。消費者は健康を考え、商品を購入している訳です。ある意味、「健康という病」に取り憑かれてしまっています😀

見方を変えると、「健康という病」がさらなる病気を生み出しているかもしれません。

参考文献

1)Pase, Matthew P., et al. “Sugar-and artificially sweetened beverages and the risks of incident stroke and dementia: a prospective cohort study.” Stroke 48.5 (2017): 1139-1146.

2)Suez, Jotham, et al. “Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota.” Nature 514.7521 (2014): 181-186.

3)Hirai, Shinobu, et al. “High-sucrose diets contribute to brain angiopathy with impaired glucose uptake and psychosis-related higher brain dysfunctions in mice.” Science advances 7.46 (2021): eabl6077.

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