イベルメクチンについて

About Ivermectin

東京都の医師会の尾崎会長の「イベルメクチン」発言で話題の「イベルメクチン」について患者さんからも問い合わせがあるのでちょっと調べてみました。

「イベルメクチン」というワードに、ほとんどの日本人は、聞き覚えがあるはずです。思い起こせば、今から6年ほど前の2015年に大村 智博士が「イベルメクチン」でノーベル生理学・医学賞を受賞したからです。

大村先生は、大のゴルフ好きで、ゴルフに行くとゴルフ場の土を必ず持ち帰ってきたそうです。「イベルメクチン」は、川奈ホテルGCの近くの土壌から分離した放線菌をもとに開発されたというのは有名な話です。

また、愛犬家は、イベルメクチンのお世話になっています。当然、当家の犬もお世話になっています。

「イベルメクチン」は1981年から動物薬として販売されました。この薬剤を使うことによって、寄生虫の駆除が簡単に行えるようになりました。

犬のフィラリアの予防と駆除に使用しています。この薬のお陰で犬はフィラリアになることなく犬の寿命が約2倍に延びたといわれています。

また、「イベルメクチン」はオンコセルカ症(河川盲目症)の治療薬として有名です。

さらに、日本では2006年に疥癬に治療薬として承認されて使用されています。

ワンダードラッグとしての「イベルメクチン」は寄生虫に効果がある薬と思われていますが、ワンダードラックなので、エイズ、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス等幅広いウイルスに抗ウイルス活性を示していました。

IN Vitroでイベルメクチンがコロナを増殖を抑制

新型コロナウイルスの世界的流行が始まったころ、既存の薬で効果があるものはないものかと世界中で検討が行われました。

ワンダードラックとして有名な「イベルメクチン」に目をつけたオーストラリアのグループが、「イベルメクチン」は、試験管レベルの研究で、新型コロナウイルスがヒトの細胞内で増殖する際に、ウイルスのたんぱく質の核内移行を妨害し、増殖を抑制することを発表しました。1)

イベルメクチンが有効かも?

「イベルメクチン」が新型コロナウイルスに対して患者さんでも有効かもしれないと言う話になり、色めき立ちます、当然、世界中で医師主導で治験が始まりました。

ところが、医師指導で行われているため、被験者数が少なく、エビデンスとしてはいまいちなデータしか得られません。

悲しいかな特許の期限が切れた薬

製薬会社は、新薬に関しては会社の社運がかかっているので、大規模でエビデンスが得られる治験等を行いますが、特許切れの薬にはインセティブがないので見向きもしません。

「イベルメクチン」は、薬が発売されてからすでに20年以上経過しているので、特許が切れてどの製薬会社でも販売が可能な薬です。

「イベルメクチン」の販売元のメルク社も治験には積極的でなく、「イベルメクチン」は効果がないとアナウンスしています。

さらに、新薬コロナの新薬の創薬に躍起です。

メルク社のイベルメクチンに対するアナウンスはこちら

エビデンスが不確か

2021年の3月31日にWHOが「イベルメクチン」に対するアドバイスを出しました。

「WHO advises that ivermectin only be used to treat COVID-19 within clinical trials」

標題は、「WHOは、イベルメクチンは臨床試験内のCOVID-19の治療にのみ使用することを推奨しています」と言うもので、COVID-19患者を治療するためのイベルメクチンの使用に関する現在の証拠は決定的でないので、より多くのデータが利用可能になるまで、WHOはこの薬を臨床試験内でのみ使用することを推奨していますと言うものです。

世界的には、「イベルメクチン」は、エビデンスが不確かで効果があるかもしれないし、効果がないかもしれない、違う意味での「ワンダードラック」の様です。

日本政府の立ち位置

日本政府は、実は「イベルメクチン」を「適応外使用」の薬に分類しています。ちなみに、適応外使用とは、すでに国に承認されている薬を別の効能のために使用することで、副作用が起きたとしても、原則、国の救済制度の対象にはなりません。

使用しても良いけど、何かあってもお国は責任を取らないというスタンスです。

したがって、もし副作用があっても処方した医師が責任を取らなくてはならないことになります。当然、これでは医師も積極的に処方はしないことになります。

医療で使用される薬は、承認薬を使うことが基本です。

前述したように、日本政府としてもエビデンスの不確かなものは承認できないところです。

また、新薬には利権が絡んでいますので、ご存知のように、日本政府は、抗体カクテル療法や新薬の方に寄っているのが現状です。

ちなみに、抗体カクテル療法は1回25万円、ワクチンは1回2000円くらい、イベルメクチンはジェネリックで販売されていますので1錠120円程になります。

利権問題は別にして、現在は、初期の状態で使用できる薬はないのが現状です。「イベルメクチン」は、患者さんに使用できるという信頼に値するエビデンスがあれば使用できると言うことなので、やはりエビデンスが必要です。

興和が立ち上がった

 興和は、2021年7月1日に、北里大学・大村智特別栄誉教授、花木秀明教授、愛知医科大学・三鴨廣繁教授ならびに東京都医師会(会長:尾﨑治夫医師)の協力の下、イベルメクチンの新型コロナウイルスに対する臨床効果を早急に確認し、早期に治療薬の実用化を目指すことを発表しました。

ちなみに、薬品会社の興和が参加すれば、大規模な治験も行われ、良好な結果が得られれば、スムーズに薬の申請等も行え、薬が承認されるかもしれません。

良い結果が出ることを祈るばかりです。

嬉しいニュース

「塩野義製薬」は、新型コロナウイルスの飲み薬タイプの治療薬について、年内に「条件付き早期承認」の申請を目指していることがわかった。 塩野義製薬は、飲み薬タイプの治療薬の臨床試験を、7月から始めている。 この治療薬は、軽症から中等症の患者を想定していて、感染初期に1日1回、5日続けて服用することで、体内のウイルスの量を低下させ、重症化を防ぐことが期待されている。 今後、軽症の患者ら数百人を対象にした治験を、11月までに行う予定。 塩野義製薬は、一定の安全性や有効性を確認したうえで、最終段階の治験を前に、国の承認を得る「条件付き早期承認」を年内にも申請したいとしている。

FNNプライムオンライン

新型コロナウイルスの飲み薬タイプの治療薬について、日本でも最終段階の臨床試験を始めるとファイザー社の日本法人が明らかにしました。  アメリカのファイザー社が海外で開発中の治療薬は、点滴や注射の必要がなく、在宅療養でも使いやすい「飲み薬」のタイプで、体内でウイルスが増えるのを防ぎます。  軽症の患者に投与して重症化を抑える効果が期待されています。  アメリカなど海外では、7月から最終段階の臨床試験が始まっていて、日本もこれに参加する形で準備を進めているということです。

ANNnewsCH

まとめ

「イベルメクチン」に関してはエビデンス不足は否めない様です。ただし、今回、興和が治験を行うことに企業主体になるので、期待が持てそうです。

現在、一押しの「抗体カクテル療法」は、中等度以上の症状がある場合にしか使用できず、使用範囲が非常に限られています。

初期の症状で使用できる薬が待望されています。

現状は、初期症状の段階で使用できる薬はないので、緊急時の対応として治療に有用な適応外使用の薬を「特定医薬品」に指定し、副作用が出た場合には国の救済の対象にしない限り難しそうです。

嬉しいニュースとして、塩野義製薬の飲み薬やファイザーの飲み薬など、新型コロナの初期の治療薬がもう少しで発売される様です。

日本政府としては、既存薬より新薬によるコロナ治療といったところの様です。

9月3日の分科会の提言では「ワクチン・検査パッケージ」という新たな作戦も提案されました。ただしこれにも若干の問題はあり、日本ではワクチン接種が義務ではないので、接種をしていない人が制限を受けてしまうことになってしまいます。

この辺りも十分に検討して、国民全体で検討してくべきだとしていました。2)

ワクチン接種が国民に浸透してきたことや、コロナに対する治療法の確立、経口薬等など微かな光が見えてきました。

参考文献

1)Caly, Leon, et al. “The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro.” Antiviral research 178 (2020): 104787.

2)新型コロナウイルス感染症対策分科会 資料

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