次亜塩素酸水について②
About hypochlorous acid water ②
次亜塩素酸水は、薬機法の決まりで、抗菌というワードしか本来は使用できませんが、本ブログでは、表現上、消毒、殺菌等のワードを使用しています。
はじめに
6月26日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)における新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価によって、新型コロナウイルスに対する既存の消毒方法に加え、一部の界面活性剤と次亜塩素酸水も有効であることが確認され、最終報告が発表されました。
この発表を受けて、経済産業省、厚生労働省及び消費者庁は合同で、消毒剤等の選び方や使い方など、新型コロナウイルスの消毒・除菌方法に関する情報を取りまとめました。
経済産業省が、新型コロナウイルス対策の感染予防として、効果の確認された界面活性剤を含む家庭用洗剤を使って物品からのウイルスの除去をする場合の具体的なやり方などの動画を作成してくれましたので参考にご覧ください。(詳しく説明されていますので大変参考になります。)
サイトはこちら
今回のブログは、この発表を基に、再度、次亜塩素酸水をフォーカスしてみます。
前回のデータで唯一、電気分解で生成された次亜塩素酸水に効果がないとしていた北里大学でしたが、帯広畜産大学がデータの検証に参加していました。
何故でしょうか?
今回の公開資料はこちら
次亜塩素酸水の使い方
今回、次亜塩素酸水の使い方や有効濃度等が明確になりました。
「拭き掃除で使用する場合」と「掛け流しで使用する場合」で次亜塩素酸水の有効濃度が異なることと若干の取り扱いが異なります。
さらに、アルコールと同様な方法では効果はなく、適切な使用をしないと効果が得られないので、注意が必要です。
詳しくはこちら
次亜塩素酸水は「物品」に使用
基本的に、
次亜塩素酸水は物品に使用することになりました。
次亜塩素酸水の手指の使用は?
使用は不可
手指に対する使用は、今回のNITEの検証では未評価でありますが、但書として、
手指など人体に用いる場合は、品質・有効性・人体への安全性が確認された「医薬品・医薬部外品」(「医薬品」「医薬部外品」との表示のあるもの)を使用してください。
としてありました。
お国としては、暗に、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律のことを言っています。
次亜塩素酸水で「手指の消毒」は謳えない
6月22日にJARO(日本広告審査機構)で次亜塩素酸水の広告が取り上げられました。
手指の消毒も「消毒」というワードで問題ありです。
商品が医薬品や医薬部外品ではない雑貨品である場合、仮に本当に効果があっても、特定の疾病や特定の菌、ウイルスへの有効性はうたうことはできません。これは医薬品医療機器等法により、特定疾病や特定ウイルスへの効果は、医薬品等の効果として認められているものでなければならないとしているためです。菌やウイルスを特定しなければ、雑貨品でも物品への除菌やウイルス除去はうたえますが、これは洗浄やふき取りなど物理的なもので、作用としての殺菌やウイルスの死滅はいえません。また除菌であっても手指など人体への除菌はうたえません。肌への効果の訴求は医薬品、医薬部外品でなければならないからです。これは雑貨品だけではなく化粧品であっても同様です。化粧品の効果に除菌や殺菌は無いからです。
以上のことは医薬品医療機器等法に関する広告表示規制ですが、消費者庁では新型コロナウイルスに関する感染予防を標ぼうする広告表示は、現状では客観性・合理性を欠き、景品表示法、健康増進法違反のおそれが高いものとして、多くの改善要請を行っています。現状、次亜塩素酸水が「新型コロナウイルス対策」と表示して広告することはできないといえるでしょう。
JARO
次亜塩素酸水の「うがい」もNG
手指に関して不適切なものが、口腔内に入れて良い訳がありません。当然のごとくありえません。従来の安全性が認められたものをご使用ください。
さらに、今回のNITEの発表でも明らかになりましたが、非電解型とジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの高濃度の次亜塩素酸水において細胞傷害性が認められております。
今回の検証は有効性の検証を行ったもので生体への安全性を行ったものではありませんが、データの結果は、ちょっと問題がありそうです。200ppm以上の高濃度の次亜塩素酸水では細胞傷害を考慮しなければならないということです。
一部の歯科医院でpH9の500ppmの高濃度の次亜塩素酸水と称し歯周病やむし歯の予防として使用している様です。pHが9のアルカリ性であるので既に次亜塩素酸水ではありませんが・・・
ずいぶん高濃度ですねぇ?
また、謎の液体ですねぇ?
食塩水を電気分解して生成されるpH9の液体は、基本的には次亜塩素酸ナトリウムが主成分の液体なんですけど?(これについては、「次亜塩素酸水を人体に使用する疑問」で詳しく触れていますので気になる人はご覧ください。)
ちなみに謎の液体も明らかに広告違反になります。「手指の消毒」と同様な結果になると予想されます。
広告違反より以前に、人体に対して安全性が認められていないものをうがい水として使用することなどあり得ないことです。
口腔内は、「医療品」あるいは「医薬部外品」を使用するべきです。
次亜塩素酸水の空間噴霧
現時点では、消毒効果が「ある濃度の次亜塩素酸水を吸い込むことは推奨できない」ということと「空間噴霧用の消毒薬と承認された次亜塩素酸水はない」と発表がありました。2)
ちなみに、今後も消毒効果がある薬品を噴霧することはないと思います。
そもそも、消毒効果があるものを空間に噴霧してその同じ空間に人間がいることはあり得ないことです。このことは、WHOやCDCも認めていません。
新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法(一覧)
様々な方法で消毒や除菌が可能です。次亜塩素酸水やアルコール以外でも十分に対策が可能です。
次亜塩素酸水やアルコールも予備洗いをしないと十分な効果が得られません。
ここからは、個人的な意見ですが、石鹸を用いた適切な手洗いで十分ではないかと思います。(新型コロナウイルスの場合)
理由は、次亜塩素酸水もアルコールも臭いので石鹸の臭いは不快にならないし、それなりに効果があるためです。3)(石鹸の効果についてを参照してください)
様々な方法があるので、ご自身のスタンスにあった有効な消毒や除菌の方法を選択してください。
関係省庁から、情報が発信されていますので参考にしてください。2)
まとめ
次亜塩素酸水は物品に使用
次亜塩素酸水は人体への使用はNG
図4に示すように、次亜塩素酸水は、医療では、強酸性電解水pH2.7のものが手指消毒と内視鏡洗浄として使用しても問題ないと認められています。
それ以外は医療では使用はできないと法律で決められています。4)
人の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされる物は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第2条に規定する「医薬品」又は「医薬部外品」(以下「医薬品等」という。)になります。
このため、人の身体や器具類の消毒を目的とする物は、医薬品等に該当します。
さらに、医薬品等については、医薬品医療機器等法に基づき安全性、有効性が確認されており、製品を正しく使用したにもかかわらず健康被害が発生した場合には、国が補償する制度となっています。
その他の製品つまり雑品に分類される次亜塩素酸水を用いた場合は、製造者、販売者等の関与した者に一切の責任が問われることになります。
新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価によって、次亜塩素酸水の適切な使用方法等は、医療関係者は既に承知の事でしたが、さらに多くの方も知ることになりました。
次亜塩素酸水について十分理解したうえで適切に使用したいものです。
追記(2021年3月31日)
2020年12月24日に、独立行政法人国民生活センターから、『物のウイルス対策等を謳う「次亜塩素酸水」』と題し、市販されている「次亜塩素酸水」について有効塩素濃度やpH、表示等について調査し、消費者に情報提供されました。
詳しくは、『物のウイルス対策等を謳う「次亜塩素酸水」』をご覧ください。
参考文献
1)新型コロナウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価にかかる検証試験の結果について(第3報)
2)新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
4)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
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