ファイザーから入院・死亡が89%減の新型コロナ経口薬「パクスロビド」
Pfizer's new corona oral drug "PAXLOVID" reduces hospitalization and death by 89%
新型コロナウイルスの「ゲームチェンジャー」になるかもしれない経口治療薬のニュースが11月5日に発表されました2)。
薬の名前は「パクスロビド」で、「PF-07321332」とHIVの薬である「リトナビル」の合剤の様です。
ちなみに、イベルメクチンで有名なメルク社から1ヶ月ほど前の10月1日に、入院や死亡が50%減になる新型コロナウイルスの経口治療薬「モヌルピラビル」3)が発表されたことも記憶に新しいところです。
ところが「パクスロビド」は入院や死亡が89%減になるというので驚きです。
コロナの経口治療薬は、コロナ対策を一変させることは言うまでもありませんが、おりしもファイザーの発表と同日に英国が「モヌルピラビル」を世界初に承認したというニュースが舞い込んできました。
新型コロナウイルスの経口治療薬がこれから続々と登場してきますが、2020年の登場は今のところ「モヌルピラビル」と年内にファイザーの「パクスロビト」ぐらいです。ちなみに、日本の塩野義製薬の経口治療薬はファイザー社と同様なメインプロテアーゼの活性をブロックする薬なので期待ができますねぇ。
そこで、本日のブログは、「パクスロビド」をフォーカスしてみました。
パクスロビドの作用機序
PF-07321332とHIVの治療薬のリトナビルの合剤です。
PF-07321332という抗ウイルス薬は、コロナウイルスの複製に必要な酵素である3CLプロテアーゼ活性をブロックするように設計されています。低用量のリトナビルとの同時投与は、PF-07321332の代謝または分解を遅くさせ高濃度で長期間体内で活性を維持します。
中間分析では入院や死亡リスクが89%減
中間分析では、症状の発症から3日以内に治療を受けた患者さん(主要評価項目)において、プラセボと比較して、COVID-19関連の入院または何らかの原因による死亡のリスクが89%減少したことが示されました。
パクスロビドを投与された患者さんの0.8%は、無作為化後28日目まで入院し(3/389は死亡なしで入院)、プラセボを投与されて入院または死亡した患者さんの7.0%(27/385は入院し、その後7人が死亡)でした。
症状の発症から5日以内に治療された患者さんでは、 パクスロビドを投与された患者さんの1.0%は、無作為化後28日目まで入院し(6/607入院、死亡なし)、プラセボを投与された患者さんの6.7%(41/612入院、その後10人の死亡)と比較して、高い統計的 有意性(p <0.0001)。 28日目までの全研究集団において、プラセボを投与された患者の10人(1.6%)の死亡と比較して、パクスロビドを投与された患者さんの死亡は報告されませんでした。2)
今後の展望は?
承認された場合は、病気の重症度、入院、死亡を減らし、感染の可能性を減らすために、在宅治療としてより広く処方することができます。暴露後、成人の間で、懸念される変異株や他の既知のコロナウイルスに対して強力な抗ウイルスinvitro活性を示しており、複数のタイプのコロナウイルス感染症の治療薬としての可能性を示唆しているとしていました。
言うまでもありませんが、飲み薬での新型コロナ治療薬の意義は非常に大きいと思えます。
ちなみに、現在は、重症化リスクのある酸素投与を必要としない軽症・中等症患者さんには抗体カクテル療法と、ソトロビマブのモノクローナル抗体が使用できるようになりましたが、どちらも点滴での投与となっています。したがって、診断してすぐに処方というわけにはいきません。
抗インフルエンザ薬のタミフルの様になればと希望を抱かせてくれます。
参考資料
1)PFIZER INITIATES PHASE 1 STUDY OF NOVEL ORAL ANTIVIRAL THERAPEUTIC AGENT AGAINST SARS-COV-2