厚生省ブースター接種を容認
Ministry of health and welfare booster inoculation allowed
9月17日に、厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの「ブースター接種」を容認しました。
世界に目を向けていると、図1に示す様に、イスラエルがワクチンのブースター接種に一番積極的で、すでに8月から3回目の接種が行われています。続いて、フランスとドイツが9月から始まりました。
3回目の接種を終えたイスラエルですが、なんと感染爆発が起きてしまっています。ワクチンは、デルタ株にはあまり有効でないということでしょうか?
デルタ株などの変異株に対応した改変型のワクチンの接種を行わないと効果がなさそうです。
ブースター接種骨子
2回目までと同じワクチンを使用することが基本
2回目から8ヶ月以上経過していること
対象はこれから検討すること
厚生労働省は、上記のようなブースター接種の骨子を示しました。
もし接種するとしたら、医療従事者からの接種になります。早ければ年内には接種が行われることになりますが、2回目までと同じワクチンを使用することが基本なので、前述したようにイスラエルの状況を見る限りでは、ちょっと微妙な感じです。
イスラエル以外は、50歳から65歳以上に接種する国がほとんどで、日本も諸外国の動向を見つつ対象については検討されると思います。
河野ワクチン担当大臣ブースター接種について語る
河野大臣はワクチンの3回目接種について、“現在、厚生労働省で2回目接種完了から概ね8か月以上の間隔をあけるといった議論が行われている”と説明しました。そのうえで、年内に医療従事者へ、年明けには高齢者に3回目の接種が行われるとの見通しを示し、各自治体に向けて接種が円滑に進むよう準備を呼びかけました。
TBS NEWS
WHOは反対の意向
WHOは、先進国がワクチン買い占めに動くため途上国との「ワクチン格差」が広がることを懸念しています。さらに、先進国には、9月まで3回目の接種 を行わない様に、先進国に勧告していますが、先進国はすでに接種している国も認められます。
日本政府は、国民にもワクチンを供給していますが、途上国ワクチン供給として10億㌦拠出しています。これは、アメリカの25億㌦に次ぐ規模です。
ちなみに、これは今回退陣する菅首相の功績です。
さらに、WHOはワクチン供給の不均衡は、流行の長期化と、危険な変異株の出現につながりかねないと懸念しています。
FDAはブレブレ
米国食品医薬品局(FDA)は、15日に新型コロナワクチンの「ブースター接種」をしなくても、効果が十分であるとの見解を出しましたが、ここに来て、急転直下、2回目の接種から6カ月以上過ぎた人が対象で、65歳以上、または感染しやすい環境にいたり重症化するリスクが高かったりする18歳以上に限定して接種を許可しました。
3回目の接種は本当に必要なのか?
そもそも、1回目の接種が終わっていないのに、3回目の接種の話ということは・・・
ザックリ、2回の接種ではワクチンは効果がないので、追加が必要ということです。
ちなみに私たちが接種しているワクチンは、初期の新型コロナウイルスで作られたものでしたが、変異株のデルタ型が出現するまでは、非常に有効でした。
2021年の6月ごろには、アメリカではワクチン接種により、コロナが激減してコロナに打ち勝ったと勝利宣言をしたことは記憶に新しいところです。しかしながら、それからわずか2ヶ月もたたないうちに、デルタ株により感染者が爆増してしまいました。
今では敗北宣言になってしまっています。
現在のワクチンは、半年ぐらいすると中和抗体が低下してくるので、抗体価をあげるには追加接種が必要なことが判明しました。3回の接種をすれば大丈夫だといいのですが?
3回接種のイスラエルはどうなのか?
9月15日に世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の一つであるNEJMにイスラエルのブースター接種の文献が公表されました。2)
この文献のデータは、イスラエル保健省のデータベースから、2021年7月30日から8月31日までの期間の、60歳以上で完全に予防接種を受けた(つまり、BNT162b2を2回接種した)1,137,804人に関するデータを抽出し用いています。
それによると、3回目接種により、非接種者より接種した方の感染率は11.3倍低く、重症化も19.5倍低いという結果でした。
文献と実際の感染者が乖離している
しかしながら、図2に示す様にブースター接種を行っても感染者は爆増しています。文献は、60歳以上の人をデータ抽出しているので60歳以下の人の感染によるものとしか考えられません。文献のデータとは裏腹にイスラエルでは感染者が爆増していることから4回目の接種が囁かれています。
もしかしたら、定期的なブースター接種や変異型に有効なワクチンの接種が「ニューノーマル」になってしまう時代が来るかもしれません。
まとめ
日本政府はブースター接種を行う意向の様です。
ワクチンを接種して得られる効果は、「感染予防効果」「発症予防効果」「重症化予防効果」がありますが、現在接種している新型コロナウイルスに対するワクチンには「重症化予防効果」は十分あることがわかっています。
3回目のブースター接種を実施しているのはイスラエルしかありませんので、イスラエルの結果を見てみると感染者が爆増しているので感染予防効果および発症予防効果に関してはあまりない様に思われます。
しかしながら、現時点での厚生労働省の方針では、まず医療従事者から接種して次に高齢者の様です。
どちらにしても、感染リスクのある人は現時点ではブースター接種の対象者になりそうです。感染リスクのあまり高くない人は、ワクチン接種希望者の2回目の摂取が終了してから状況あるいはワクチンに関する情報を入手して接種するかしないか決定することになりそうです。
8月の中旬ごろは、デルタ株の感染爆発が起こりコントロール不能と言わんばかりか「自分の身は自分で守れ」との発言、ところが、9月に入って急速に感染者数は減少しています。
減少の理由は専門家でも説明がつきません。
このように専門家でも、把握することができない新型コロナウイルスなので、政府の舵取りはさらに難しいところです。また、コロナ対策としてワクチンを接種する側の国民もどう考えるか難しいところです。
ちなみに、全世界的に、デルタ株はピークアウトの兆しが見えています。
第6波の波の高さが小さいことを祈るばかりです。
参考資料
1)第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料(2021年9月17日)
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