アルジネート印象材の練り方
はじめに
新人の衛生士さんは、アルジネート印象材の手練りすることが、結構苦手な方がいるように思われます。コツとポイントさえ押さえればアルジネート印象材は簡単に練ることができます。
最近では、アルジネート印象材を手練りする医院は少なくなってきましたが、訪問歯科等では手練りをする場面に遭遇します。いざという時のためにアルジネート印象材を手練りする方法をマスターしておく必要があると思われます。
そこで、当院の新人用教育プログラムの一つであるアルジネート印象材の手練りについてまとめてありますので、アルジネート印象材の手練りの仕方について悩んでいる方は、ご参考になさってください。
アルジネート印象材の予告ビデオも作成してみましたのでチラ見してください😉
アルジネートについて
歯科治療で使用されているアルジネート印象材は、水溶性のアルギン酸ナトリウムと石膏を反応させて、不溶性のアルギン酸カルシウムを作り硬化します。
アルギン酸ナトリウムは、海藻に含まれる多糖類の一種で、食物繊維のひとつです。海藻に含まれるアルギン酸を抽出、精製した後、ナトリウムで中和して得られます。
余談ですが、蒲鉾は、スケソウダラの擂り身にアルギン酸を入れることによって作っています。また人工イクラもアルギン酸ナトリウムを利用しています。
また、アルギン酸は、医療用で創傷被覆材や消化管の止血材としても使用されています。
混水比
メーカーの指定混水比があるのでそれに準じて行ってください。ちなみに当院で使用しているアルジネート印象材は、粉8.4gに対して水20mlが指定されています。
固まってしまうのが怖くてやたらと水を多くして練るのはNGです。適切な混水比で行ってください。
硬化時間(粉末型)
粉末型アルジネート印象材は表面処理が施してあるので材料の保存性はよく、気温の影響も受けず安定しています。
硬化時間は、練和時の水温と水の量によって変化します。
水温が高ければ硬化は促進
水の量が多ければ硬化は遅延
します。しかしながら、固まるのを遅くするために水の量を多くするのはNGです。夏場などは、冷蔵庫で冷やした水を使うなど工夫して混水比を守ってください。また、硬化時間の違いによりスロータイプのものもありますのでTPOにより使い分けてください。
アルジネート印象材の種類(硬化時間によるもの)
アルジネート印象材は、現在ではほとんどの医院が粉末タイプのものを使用しています。また前記したように、硬化時間によって「ファーストタイプ」、「ノーマルタイプ」、「スロータイプ」等がありますが、本コンテンツでは、最も一般的に使用されているノーマルタイプの練り方についてフォーカスしています。
アルジネート印象材練り方のポイント
アルジネート印象材は30秒から1分ぐらいで一連の作業を行わなければいけません。
アルジネート印象材を手練りする場合は、大きく分けて図1の様に
「練和」
「脱泡」
「盛ること」
の3つのステップで行われます。
それぞれのステップにおいて、注意することを適切に行えば、アルジネート印象材を練ることの一連のステップは簡単に行うことができます。
ところで・・・
アルジネート印象材の手練りは、ラバーボールとスパチュラを使って行います。これらの道具を上手に使いこなす必要があります。そこでまず、スパチュラとラバーボールの使い方をマスターすることから始めます。
どうやって使うのか?
スパチュラの握り方
歯ブラシは、ペングリップで握りますが、スパチュラは基本的には写真1の様にパームグリップで握ります。
ちなみに、パームグリップは、英語だとPalm gripと綴ります。Palmとは「手のひら」で、gripは「握る」なので、写真1の様に「手のひらで握る」ようになります。
歯ブラシはパームグリップで握っている人をペングリップで握るように指導していると思いますが、アルジネート印象材を練る時は、ペングリップではなくパームグリップにしてください。
余談ですが、最近人気の卓球をイメージするとわかりやすいと思います。卓球では、ラケットの種類によってグリップの仕方が、ペングリップとシェークハンドとありますが、ラケットにあったグリップをしないと上手くいきません。
これと同じでスパチュラの握り方は大事です。
NGグリップ
スパチュラの握り方は、写真2のペングリップや写真3の逆パームグリップはあまりお勧めできません。
スパチュラはパームグリップで握ることをお勧めします。
パームグリップで握る理由は、脱泡するときにスパチュラをラバーボールに押し付け易いからです。
ラバーボールの持ち方
ラバーボールの持ち方は・・・
手の小さい女性は、写真4の様に、ラバーボールの高台(こうだい)の部分を親指と人差し指で保持してください。残りの指の中指から小指まではラバーボールの側面に当ててください。
手の大きい方は、写真5の様に、手のひらでラバーボールを保持してもOKです。
ラバーボールの回し方
ラバーボールを保持しながら、ラバーボールの高台あるいは側面を使って指で回転させてください。
この操作が非常に重要です。
これらの操作を次のビデオ見て練習してください。
アルジネート印象材なしで、スパチュラとラバーボールの回すのを練習(ビデオ)
練るのがうまくできない理由
ラバーボールとスパチュラの使ってアルジネート印象材を練るのが難しいのは、実はラバーボールがグニャグニャしているので安定していないからです。
実生活で粉物を練るのを想像してください。例えば、ホットケーキの粉を練る時は使用するボールは硬いものを使います。使用するボールが硬いので安定しているから練りやすいのです。
つまり、グニャグニャのものをうまく使う方法を会得してしまえば意外と簡単に練ることができます。
これから、その方法について説明します。
ラバーボールとスパチュラの使い方
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ビデオ作成等にあたり、当院の衛生士さんにご協力いただきました。感謝申し上げます。