5-ALAについて
About 5-ALA
Photo by Prasesh Shiwakoti (Lomash) on Unsplash
5-ALAが新型コロナウイルスの感染予防あるいは、薬として有効であるのではないかとの報道があったので、ちょっと5-ALAについて探究してみました。
5-ALAとは
5-ALAは、5-aminolevulinic acidのことで、日本語にすると5-アミノレブリン酸です。
カルボキシル基(COOH)とアミノ基(NH2)があるのでアミノ酸です。
5- ALAは自分の体で生成することができるものですが、人体での5-ALAの役割はただひとつであり、ヘムという物質のもととなることです。8個の5-ALAが合わさって出来上がるヘムはさまざまな生命活動の鍵となると言われています。
5-ALAの効果
5-ALAを飲むことでミトコンドリアが活性化され、ミトコンドリアが増殖します。3)
また、がん細胞になると増殖が早いので、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の効率が悪いため5-ALAから効果的にヘムを生合成することができずプロトポルフィリンIX(PPIX)が細胞内に蓄積します。またPPIXは紫色の光を当てると赤色発光するので、がん細胞を検出することができます。4)
5-ALAがHO-1を誘導し、ビリルビン、一酸化炭素を生み出すことにより強力な抗酸化作用(活性酸素を消す作用)を持つこともわかりました。5)さらに、5-ALAはただ抗酸化作用を持つだけではなく、免疫細胞の中でHO-1*を上げることで、本来は異物を攻撃するべき免疫細胞が暴走し、生体に害を与えるような過剰な反応を抑える作用も持つようです。6)
*HO-1:Heme Oxygenase 1の略で、熱や酸化ストレス、炎症性サイトカインなどによって発現が誘導されるタンパク質です。NADPHやO2などの存在下で、ヘムをCO、鉄イオ、ビリベルディンへと分解し、遊離ヘムの毒性から細胞を保護していると考えられています。
5-ALAが新型コロナに有効なメカニズム
ざっくりですが・・・
新型コロナウイルスは、図3に示す様に、ACE2受容体と結合して細胞内に入り込みます。そして細胞内で増殖してウイルスを増やして悪さをします。
また、5-ALAは8つ集まると「PPIX」=「プロトポルフィリンIX」という物質になります。 これが鉄と結合すると「Heme」=「ヘム」になります。
解明はされていませんが・・・
5-ALAの代謝で作られる「PPIX」と「ヘム」が新型コロナウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」に結合します。この状態になってしまうと、新型コロナウイルスは細胞に侵入することができなくなります。
5-ALA投与レポート
COVID-19の典型的な症状と重度の喫煙に関連するCOPDの疑いのある6人の患者さんに、最大耐量(MTD)のSFC*を含む5-ALAを複数回経口投与しました。 3〜7日間、続いて低用量の5-ALAとSFCで2〜3週間治療します。
個々の患者の回復時間は、コロナウイルス感染の標準治療のみを受けた患者について報告されたものよりも有意に短かく、これらの結果は、急性期COVID-19患者の治療サプリメントとして、SFCを使用した5-ALAの安全性、忍容性、および有効性を裏付けているとしていました。2)
*SFC:Sodium Ferrous Citrateの略で、クエン酸第一鉄ナトリウムのこと
5-ALA摂取について
5-ALAは、ミトコンドリアで産生されますが、加齢と共に産生量が減少することがわかっています。ちなみに17歳ぐらいから減少し始めます。
最近5-ALAの減少が、老化やエイジングに関係していると言われる様になってきました。私たちのエネルギーの根源であるATPとは切ってもきれない関係です。
食品から摂取
私たちは、1日当たり約50μgの5-ALAを摂っているのではないかと推定されています。さらに、長い間、摂取していることになり普段摂取している量なら副作用についてはクリアされています。
5-ALAが多く含まれる食品は、納豆などの発酵食品、ワインや日本酒等ありますが、相当量摂取する必要があり、これでは不十分の様です。
サプリメントから摂取
いろいろな会社から販売されています。
また、愛犬家や愛猫家などのペットを飼っている方で、すでに、知っている方は多いと思いますが、動物病院に行くと、老犬や老猫が元気になる5-ALA のサプリを見ることがあります。
食品では摂取できない量が摂取可能ですが、基礎疾患をお持ちの方は、服用される場合は、かかりつけの先生にご相談なさることをお勧めします。
まとめ
5-ALAが新型コロナウイルスの感染に対する免疫機構に関与しているとしたら、ミトコンドリアの活性が高い若い人の方が感染しても重症化しないこともなんとなく頷けます。
これらの関係性についての詳細は、もう少し時間がかかるところだと思います。
しかしながら、5-ALAは室温で長期間保存でき、低価格で安定した供給が可能なこと、さらに、ウイルスの変異にも対応できる可能性が高いなど、多くの利点がありそうです。
2月4日から長崎大学病院で、患者に5-ALAを投与する特定臨床研究が始まりました。これにより薬の投与量等がわかる様になりそうです。
もしかしたら、普通の風邪薬の様に簡単に入手できる様になるかもしれません。
参考文献
3)Fujii, Chikako, et al. “Treatment of sarcopenia and glucose intolerance through mitochondrial activation by 5-aminolevulinic acid.” Scientific reports 7.1 (2017): 1-12.
参考ビデオ
関西福祉科学大学保健医療学部教授の解説ビデオがわかり易いので、興味のある方はご覧ください。